あなたはサイト改善と聞くと、どのようなことを思い浮かべますか?
中には、高度な解析ツールや難しいデータ分析などが思い浮かぶ人もいるかもしれませんね。
しかし、サイト改善しようと、すぐGoogleアナリティクスを確認することは多くはありません。
ウェブサイトに訪れているのは、感情をもった“人”です。
だからこそ、『ユーザーの気持ちになってサイトを触る』『エンドユーザーの声を集めて仮説を立てる』ことが重要なのです。
そこで今回の記事では、ユーザーに直接質問する「ユーザーアンケート」という手法を用いて、ブランドグッズを扱うECサイトのサイト改善をした事例をご紹介します。
もしあなたがサイト改善をする時には、ぜひユーザーアンケートを使って、お客様の声に耳を傾けてみてください。事業者にとっての当たり前が、お客さまにとっては当たり前ではない。そんなギャップは多々あります。
そのギャップを見つけ、サイトに反映させることで、より結果が出るサイトを作り上げてみてください。
お客様の声を集める方法
こちらは実際に行ったアンケート用紙の例です。
現在は、簡単にメールでアンケートを取ることができますが、当時はわざわざ手書きにこだわりました。
その理由としては、以下の点が挙げられます。
- ウェブに掲載する感想の実在性を高めたいため。
- 本気で回答してくれる人の声を知りたいため。
手書きの有効性は、状況によって異なります。
短期間で多くの回答を集めたい場合は、メールやLINEを利用することも有効です。
また、この時はアンケート回答数を増やすため、購入していただいたお客さまには500円相当のポイントを付与して回答を依頼しました。
さらに、注文後にキャンセルされたお客様にもメールを送り、キャンセルされた理由をヒアリングしました。
これらのアンケートを仕組み化し、多くのお客さまからの声を収集していきました。
質問項目のポイントと結果
なぜ選んでくれたか?を聞く
質問項目は、聞く相手によって変えています。
購入した人には『他にも似たような店舗がある中で、なぜ私たちのECサイトを選んでくれたのか?』
注文後キャンセルした方には、「なぜキャンセルしたのか」。
その理由をそれぞれ尋ねていきました。
回答結果は幅広く、さまざまなご意見がありました。
それらのお客様の声を集約すると、「扱っている商品は偽物ではなく、本物だから」という声でした。
すなわち、お客さまはECサイトでブランド商品を買う際、本物かどうかを不安に感じていることが分かったのです。
私達が扱っている商品は偽物が多いブランド。
私たち店舗運営者からすると、本物を扱うのは当たり前です。
しかし、お客様は偽物でなく本物が欲しいという強いニーズがあるのです。
お客さまの声を直接聞くことにより、事業者側とユーザー側には、大きな認識のギャップがあるということが分かります。
もしここに気づかずにサイトを運営しているとしたら、ぞっとしますね。
これまでも、サイトのデザインやブログ更新を通して、お客様に信頼を感じていただけるよう表現してきたつもりでした。
しかしお客様の側に立ってみると、全然伝わっていなかったのです。
お客様の声をもとにGoogleアナリティクスでアクセス解析してみた
「お客様は、商品が本物かどうかをとても気にしている」という視点を持って改めてアクセス解析を見直すと、会社概要のページの閲覧が意外と多いことに気が付きます。
実際にユーザーのページ遷移を見ると、トップページ⇒会社概要⇒トップページという動きが見て取れます。
一般的に偽物を扱う会社の概要ページは、会社住所が途中で切れていたり、電話番号が記載されていなかったりと、怪しいことがほとんどです。
お客様は、ECサイトの購入時に会社概要を見て、「実態がある会社か」を確かめ、信頼性を見極めようとしていると考えられます。ユーザーアンケートを取ったことで、このような仮説を立てられました。
ユーザーアンケートを取得していなければ、このような仮説につながる気づきを得ることは難しかったでしょう。
仮説にもとづいた施策を実行する
偽物を扱うサイトも存在する海外ブランド品のEC市場において、サイトの注文率を高め、売上を上げるポイントは「お客様に安心してもらうこと」だということが分かりました。
そこで、信頼性の演出や本物を扱っていることを信じていただける表現などを追加し、サイト全体の上質感や表現方法の改善を実施しました。
会社概要のページをリニューアル
本物か偽物かを不安に思っているお客様に安心いただくため、会社概要のページを改善しました。
リニューアル前は、会社の住所や電話番号が書いてあるだけの味気ないページでした。
そこに「会社紹介~私たちについて」というコンテンツを追加しました。
オフィスの風景、普段の仕事振り、スタッフ全員の顔写真を掲載。
外からでも会社の中がわかるように工夫しました。
さらに、新しい会社概要ページは、最も目立つようにグローバルメニューにも設置しました。
本物を取り扱っているので、『逃げも隠れもしませんよ』との想いを表現するためです。
偽物商品と本物商品の比較ページを設置
また本物かどうかを不安に感じているユーザーに対して、偽物と本物を比較するコンテンツを用意しました。
本物のタグと偽物のタグの違い。本物の箱と、偽物の箱の写真。
本物の皮のニオイはこんなだけど、偽物の皮は臭い。
こういった情報を1箇所にまとめ、見つけられる本物と偽物の違いを徹底的に記載しました。
本物と偽物の違いを明確に示すことで、私たちのECサイトでは本物を扱っていることを感じていただき、安心してほしいとの考えからつくりました。
返品交換制度の導入
会社概要を詳しく書き、会社内部の見える化を行う。本物と偽物の検証ページを作る。
これらのコンテンツは、ユーザーアンケートのよって分かったユーザーの不安心理を少しでも解消するために設置しました。
ただ実際のところ、どれだけコンテンツを追加しても、お客様の不安を100%の解消は難しいです。
そこで追加施策として、『返品交換保証』を導入することにしました。
この「返品交換保証」施策自体は、本物を扱っていることの直接的な証明にはなりません。
しかし返品ができることは、本物であることの間接的な証明になると考えています。
また会社概要がしっかり記載されている前提があった上で、返品交換保証もあれば、「偽物かもしれない」というお客様の不安は、解消できると考えます。
実際のところ、本物の商品をサイト上で適切に掲載すれば、返品は稀です。
具体的には、こういった点に気をつけます。
- サイズ感を正しく書く
- 掲載写真の色合いを可能な限り本物に近づける
- よくある質問を整備する
実際に発生する返品や交換は、事業者側だけではなく、お客様にも負担です。
お客様も、わざわざ好き好んで返品している訳ではないからです。
そもそも返品やサイズ交換が極力発生しないよう、お客さま目線に立った上で、商品写真を撮り直し、商品の説明ページも作り直すという意識を大切にしましょう。
少し話は脱線しましたが、このような形でユーザーアンケートによって判明したお客さまの不安心理に向き合いました。
安心感を作り出す梱包
さらに、梱包する箱を一般的な輸送用パッケージから、高級感が漂う箱に変えました。
届いた箱が無機質なものでは、並行輸入とはいえ、お客様が不安になるかもしれません。
そこで商品が届いた時に、さらにお客様に安心・満足していただくために、サイトのイメージカラーを使ったパッキングを統一しました。
不安心理は、ウェブ上だけで解消できるものではありません。
実際に届ける商品を含めて、ユーザー体験を最高なものに近づけていく意識が重要だと考えています。
この事例からの学び
お客さまの購入前の悩みや不安は、私たちサイト運営者が想像している以上に深いです。
今回は、ユーザーアンケートを使って、お客様の「安心して、本物を購入したい」という想いに気づけました。
その潜在的な想いに、徹底して本物であることを訴求する施策を行ったところ、注文率の改善につなげることができました。
まとめ
この記事では、サイト改善としてユーザーの声に耳を傾けるユーザーアンケートについて紹介しました。
サイト運営に行き詰まったら、まずはお客さまに直接ヒアリングしてみてはどうでしょう。
すると、何が問題なのか見えてきて、アクセス解析をする上での仮説も見つけられるはず。
ヒアリングするなら、ユーザーアンケートという手法が効果的です。
そしてアンケートの中では「あえて自社を選んでくれた理由」をぜひ聞いてみてくださいね。