B2Bマーケティング組織をつくり、グロースさせるコツとは。コニカミノルタジャパン 富家翔平さんインタビュー

デジタルマーケティング業界の最前線で活躍される方をインタビューするシリーズ「Pioneers(パイオニアーズ)

今回のゲストは、コニカミノルタジャパン株式会社の富家 翔平さんです。

 

富家さんは現在、コニカミノルタジャパン株式会社でマーケティング組織と新規事業の立ち上げに従事されています。

そのほかにも、マーケティング関連のイベントやセミナーへも数多く登壇されるなど精力的に活動されています。

 

そんな富家さんに、B2Bマーケティング組織の立ち上げから、成果を上げるまでの取り組みについてお話をお伺いしました。

約1万字ある長文記事となっていますので、ぜひブックマークしてご覧ください。

コニカミノルタジャパン_富家翔平氏

コニカミノルタジャパン株式会社
富家 翔平さん

マーケティングサービス事業部 MSマーケティング部 部長。大阪府出身。大手通販会社でインハウスのマーケティングを担当したのち、広告代理店へ転職。2018年より現職で「営業プロセス改革×マーケティング推進」プロジェクトを牽引し、一からマーケティング組織を立ち上げ、現在事業部全体の売上に大きく貢献している。

マーケティング組織の立ち上げは「成果」を考えるところから

瀬川:富家さん、今日はよろしくお願いします。富家さんは、どういったキャリアを経て今の仕事にたどり着いたのでしょうか。

 

富家:最初は大手テレビ通販の会社でマーケティングの仕事に携わっていました。

マーケティング担当者として、ECサイトへの集客施策の企画・実行をメインミッションとしてリスティング広告とかアフィリエイトの運用などをしていました。

数値を見ながらチューニングをしたり、お客様に商品の魅力を伝えるための説明文やバナーを考えたりすることが、とても楽しかったんですよ。

どうせなら、マーケティングやプロモーションについてもっと勉強したい!と、広告代理店に転職しました。

 

現職のコニカミノルタジャパンには、仕事を通じて知り合った方からお誘いをいただき、ジョインしました。

入社した初日に「B2Bマーケティングができるチームを作ってください、よろしくね!」と言われたのを今でも覚えています。

当時はB2Bマーケティングのことは、全くと言っていいほど知りませんでしたし、営業経験もない。「KGI?KPI?リード?何それ?」という状態でした。

 

当時の営業部長も当然、B2Bマーケティングのことはあまり詳しくなかったのですが、本当に「成果を出してね」と言われて。

僕が「成果ってなんですか?」と聞いたら、「それはまず自分たちで考えてみて」と言われました。そこからのスタートでしたね。

 

 

瀬川:マーケティング組織の立ち上げって大変ですよね。上層部からの期待も大きいと思いますが、どのように上層部の方とコミュニケーションを取られましたか?

 

富家:成果を出してね、と言われましたが、何が成果なのか、何をもって成果が出たとするのかまでは言及されていませんでした。

そこで会議室にマーケティングチーム3人で集まって、「マーケティング組織が出すべき成果って何か?」を考えるところからスタートしましたね。

わからないなりに出した結論は、「事業に貢献すること」でした。

 

事業に貢献するためには、商談とそれに紐づく売上見込み金額(パイプライン)を伸ばすことだ!と、当時全社的に導入が進んでいたSalesforceも活用した、マーケティング組織のKGI・KPIを宣言しました。

 

 

瀬川:ちょうど会社で導入をしていたSalesforceがマーケティングでも役に立ったということでしょうか。

 

富家:そうですね。Salesforceは営業を改善するツールだと認識されていますが、実はマーケティング施策が紐づくことで、成果の可視化でも役に立つんですよ。

 

そんな感じで意気揚々とスタートしましたが、6カ月後に振り返ってみた時のパイプライン創出金額の目標と実績には大きな乖離がありました。

ただ、商談数はたった半年で去年の倍以上の数を創出できていたんです

 

とはいえ目標未達は未達なので、怒られることを覚悟しながら取り組みを通じてわかったことや課題、これからの対応策についてまとめて報告しました。

結果的には、怒られることがなく、むしろ取り組みに対する理解を示してもらえたのです。

 

今思えばですが、事業貢献から逆算して目標を宣言したこと、現状抱える課題を整理し解決のためのアクションをセットにして報告したことが良かったと思っています。

 

経営層は暇じゃない。経営に影響を与える数字で語る

 

瀬川:マーケターあるあるとして、クリック率やメール開封率などをレポーティングしても、経営サイドからは取り合ってもらえないこともありますよね。マーケターが経営層と的確なコミュニケーションを取るためにはどのようなことが重要なのでしょうか。

 

富家経営や事業に影響する数字で語ることですね。例えば、受注数や、粗利、ROI、パイプラインなどといった数字です。

 

もしかしたら、細かなクリック率やセッション数とかに興味があるかもしれません。

ですが、経営者は経営に関わることしか興味がないと思った方がよいです。

 

さらに、そもそも経営層は暇じゃないので、仮に100ページもある報告書を作成したとしても、読んでくれません。

経営層に伝えるべきこと、伝えたいことを考え、要素をそぎ落としていくと、マーケの活動がどう受注に繋がり、粗利に貢献し、そのために販促費をいくら使い、ROIはどうなのか。こういったことしか残らないのです。

 

マーケティング組織における体制作りも、これとセットだと会話がしやすいと思っています。

例えば、次年度で事業部全体の売上目標が跳ね上がる場合です。売上目標が、前年の120%増だとしたら、マーケに対する期待もそれに比例して高くなりますよね。

 

となると、マーケティング組織として考えるべきことも、やるべき施策も、当然増えます。

であれば、経営層との会話は「期待に応えるには、これだけ施策量が増えるので、今の体制では無理です。増員とセットで進めさせてください」と、とてもシンプルになります。

 

 

瀬川:すると、この施策をすれば、いくら儲かるかをきちんと示せないと、経営者とはうまくコミュニケーションは取れないのでしょうか。

 

富家:おっしゃる通りです。マーケターとして最初にやるべきことは、施策の成果をきちんと数字で計測できる環境づくりと、その運用を回すことできる体制づくりだと思います。

運用を実現するには関係者の合意と協力が必要ですし、マーケティング施策の成果を可視化するには営業に商談情報を入力してもらわないといけません。

 

その働きかけをどれだけ忍耐強くできるかですし、机にふんぞり返って「それは営業の仕事ですよね」とか言っていても、前には進んでいきません。

KGI・KPIの設計も難しいとは思うのですが、運用体制をつくること、まずは軌道に乗せること、そして運用が回っている状況を維持することは本当に大変で、マーケターとしての忍耐力が求められていると思いますね。

 

営業とマーケが協力するには、同じ目標とコミュニケーション

 

瀬川:よく営業とマーケが対立する話を聞きます。「マーケがリードを作って渡しているのに、営業が全然受注してくれない」とか、逆に営業側から「マーケはもっと質のよいリード持って来いよ」のような、ある意味いがみ合いがあると思いますが、何が原因だと思いますか。

 

富家その原因は、KGI、KPIの設計だと思います

対立構造が生じている場合、営業側から見て、マーケティング組織が何に貢献しようとしているか、曖昧にしか理解されていない気がします。

マーケの人が言っていることはカタカナばかりで難しいし、自分たちにとってのメリットが不透明なので、協力してあげようって気にならない。

もしかしたら、自分たちの仕事で忙しいから遊んでいる暇はない、くらいの感覚なのかもしれません。

 

もし営業から「事業部で足りない売上のうち、マーケはこれだけの売上を作ってくれる」と認識されていれば、マーケと営業におけるすれ違いはなくなると思います。

マーケターも、マーケティング組織も、自分たちは営業の一員として売上を作る部隊であることを自覚して発信すべきですし、理解してもらうための努力と行動は必要だと思いますね。

 

 

瀬川:富家さん自身、営業の方とはどういったコミュニケーションをされていますか?

 

富家:毎週金曜日に、営業が売上や受注の状況、商談やコンペの状況などを報告する会があります。

その場にマーケティングチーム全員で参加し、事業全体の数字状況に対して、営業と一緒に向き合っています。マーケティング施策の企画や準備、実行に関しても、その場でシェアしています。

営業側の状況を踏まえて、「じゃあ、お互いに協力してやりましょう!」とコミュニケーションができると、そもそもズレや溝なんて起こりません。

結局のところ、カチッとした仕組みがあってもそれを回すのは一人ひとりの人間です。お互いが歩み寄るための相互理解が大切だと思っています

 

 

瀬川:Salesforce社が提唱する「THE MODEL(ザ・モデル)」だと分業するからこそ有機的に動くイメージですが、やはり関係者が共通の表を見て、一緒にじっくり話し合う時間が必要なのですね。

 

富家:大切なのは、あくまでもマーケが全体を見ながら全体最適のために動くことですね

THE MODELはよく分業体制と言われますが、僕はリードから商談、商談から有効商談、そして受注という全体の数字を捉えてボトルネックを特定するフレームワークだと思っています。

フレームに当てはめて、全体の数字を見てみると、いろいろな気づきがあるんです。

 

例えば、リードも商談もあるけど、有効商談に至らないのであれば、マーケが主導して改善するべきは、ただリードを取るのではなく、商談を有効商談にしていく取り組みになるはずです。

実際にはアクションを起こすのが営業であったとしても、ですね。

 

時々、「B2Bマーケティング組織を立ち上げたけど、うまくいってない」とのお話をお聞きします。

よく話を伺うと、役割が明確であるがゆえに、どこか無意識に自分がやるべき仕事に線を引いていたり、セミナーをやること自体が目的になったりしています。

そんな状況もあいまって、マーケがしている施策は「いまいち効果出ないんだよね」みたいな評価になってしまいやすいのかなと思います。

 

僕が施策をする際に気をつけているのは、マーケだけ、インサイドセールスだけでやれることをやらないこと

きちんと周りを大きく巻き込んだ取り組みや施策にしていくことが重要だと考えています。

 

自分たちの役割だけで収まらないことをすると、必然的に他部署とのコミュニケーションが生まれます。

部門間におけるコミュニケーションの課題は、しかるべき人がしかるべきテーマをしかるべきタイミングで話し合えてない時に起こります。

単純にコミュニケーションの量を増やすのではなく、意図的に常に会話が生まれるような状況をつくるようにしていますね。

 

 

瀬川:そのほかに、営業メンバーから協力を得るために大事にしていることはありますか。

 

富家:あとは、個別で営業の肌感覚を聞くことを大事にしています。

例えば、営業へ商談をトスアップしたあとは、Salesforceに登録された活動を見れば、渡した商談がどうだったのかはわかります。

ですが、あえて営業一人ひとりにきちんと聞くようにしているんです。

「最近マーケから渡している商談は、ぶっちゃけどうですか?」と。

 

返ってくるのは、現場で感じた生の「なんとなく感じていること」のフィードバックです。

そのフィードバックを踏まえて、実際の数字が乖離しているかを確認します。

 

「最近全然良くないよ」と営業に話をされて、実際に数字を見ると、有効商談化率はそこまで悪くないこともあります。

とはいえ、事実として「なんとなく良くない」と営業が感じているので、どこにギャップがあるかを考える必要があります。

見直すべきはトスアップの条件か、あるいはターゲットか、そもそも商談の中身では?…と。

 

お互いに目指すものが曖昧な中で、「営業」と「マーケ」それぞれの立場でコミュニケーションをしてしまうと、対立構造が生まれてしまいます。それは絶対に避けないといけません。

役割はありつつも、それを超えて、同じ目標を持つ人同士でコミュニケーションすることは大事にしている部分ですね。

 

役割をきちんと決めると、感謝と信頼が生まれる

 

瀬川:富家さんは今チームを率いていらっしゃるとお伺いしました。さまざまな人材がいると、それぞれ考えも違ってくると思いますが、どのようにして協力連携できるチーム作りをしていますか。

 

富家:今まさに、職種ごとの役割を明確にしています

これまでは人が少なかったので、全員がいろんな役割を兼務して進めていました。

そんな余裕も必要性もあまりなかったので、曖昧にやっていましたね。

 

ただ、施策量が増えてくると特定の人に仕事が集中したり、「あなたがやる仕事じゃないの?」みたいな暗黙の押し付け合いが起きたりすることがありました。

そこで、改めてプランナー、マーケター、オペレーターなどそれぞれの役割を定義し、「あなたにはこの役割を期待していますよ」と伝えていきました。

 

マネジメント経験もなかったので手探りで進めていたのが本音ですが、役割を明確にしたことで、役割を越えて行動してくれた人に対して賞賛や感謝、信頼みたいなのが生まれるようになりました

「自分の役割はここまでだけど、目的を達成するためにこんなことをしよう!」と役割を越えて仕事をしている人に、「ありがとう」を言いやすい環境やそのサイクルが生まれはじめているな、と感じています。

 

また最近では、どういったスキルをどのぐらいの期間で積みたいかを話して、キャリアを明確に示すことにも取り組んでいます。

今はインサイドセールスの方でもいずれマーケターになりたい人もいれば、セールスになりたい人もいます。

今はこれを期待して、来期はこれをしてほしいといった話を1人1人としています。

 

3つの事業で30人強のメンバーがいますが、役割を明確にし、期待することをきちんと伝えたことで、チームだけでなく、ひとりひとりが自立的に動き始めた感じがしています。

 

 

瀬川:役割を明確にするのは大事だと思いつつ、マーケティングの仕事は結構切り分けが難しいように感じます。どのように仕事を定義していったのでしょうか。

 

富家:実際のところは兼務することも多いです。とはいえ重要なのは、何をしている人なのか言語化して明確にすること

この人がやっていることはディレクターだな、プランナーだなと割り振っていくことで、メンバーから「私はこの仕事がしたい」とコミュニケーションを取れるようになってきました。

やっていることを明確にしていくことが第一歩だと思います。

 

意見を言うのは「否定」でないことを共通理解として持つ

瀬川:チームのメンバーには、マーケティングの取り組みの中でどういったことを伝えていますか。

 

富家:すごく当たり前な話ですが、「意見を言われる=否定じゃないよ」とめちゃくちゃ伝えています

意見を言われた時、「自分のスキルを否定された」とか、「人格を否定された」という気になってしまうことありませんか?

言った本人にそういうつもりはなかったとしても、受け取る側がそういう意識を持ってしまうと起こってしまいます。

もちろん、伝え方の工夫は最大限行うことは前提にありますが。

 

だからといって、必要以上に言い方を工夫したり、言った後のフォローを手厚くしたり、あえて裏で伝えたり、と行き過ぎるとコミュニケーションコストが上がってしまいます。

そんな状況だと、活発な議論も難しいですよね。

 

だから、誰が意思決定するかを明確にした上で、それ以外の人は自分の立場から自由に発言してよいことをルールにしました。

また何か意見を言う時は、あなたを否定しているわけではないことも繰り返し伝えています。

こういった共通理解を作っておくことが、チームを活性化させる上でポイントだと思いますね。

 

 

瀬川:確かに変に思われたら嫌だなとか、あそこで揚げ足取られたら嫌だなとか思うと、言いたいことを言えなくなりますよね。

 

富家:そうなんです。あとは「コト」に向かう人と、「ヒト」に向かう人がいることを覚えておくことも大切です

僕は特に「目標達成に向けて、必要なことはストレートに伝え合おう!」というタイプです。

しかし、人によっては「何でそんな冷たい言い方するの?」「もっと仲良くやろうよ」と感じてしまうこともあります。

 

どちらが正しいとかではないですが、「富家さんってこういう人だよね」みたいな認識がないと、「すごく怖い人だ」と間違えて捉えられる可能性もあります。

お互いのことを理解して、自分自身の居場所がそこにあるという心理的安全性を、みんなで作っていくことはとても意識しています。

 

課題と施策をセットで言う。社内報告は絶対に手を抜かない

 

瀬川:自分が現場で思うのは、マーケティング投資を通す大変さです。人やツールを導入した方がいいのは分かっているけれど、全然リクエストが通らないなんてこともありますよね。経営者にお話するコツがあれば教えてください。

 

富家:事業への期待に比例して、売上目標は上がっていきますよね。

マーケティング組織として、その目標に応えるためのマーケティングプランを練っていくと、現行の体制で施策を積み上げた時に創出できるパイプラインの金額との間にギャップがあることが分かったとします。

今のままだと目標を達成できる施策を打てないので、そういった試算とプランとセットで「こういった人が〇〇人必要です!」と伝えると、経営層も検討しやすいはずです。

 

僕も最初の2年半はずっと5人体制で来て、ようやく最近一気に人を入れてもらえるようになりました。

その背景には、ようやく社内でもマーケティングの必要性や重要性、その価値を理解してくれる人が増えてきたことがあります。

 

人材育成も兼ねて、マーケティングに関わる人をもっと増やしていこうという合意形成が図れているのもあり、人員確保のハードルはグッと下がった感覚はありますね。

これも、事業貢献を目的に4年間必死に取り組んできたおかげだと思っています。

 

 

瀬川:つまり、きちんとレポーティングをして、くどいほど言い続けるのは大事なんでしょうか。

 

富家:マーケティング組織がやっていること、創出した成果を報告できていない人は、多いのではないでしょうか。しょうもない社内仕事と言わずに、報告にはリソースを割くべきだと思っています。

極論を言えば、社内の報告書がのちの信頼や施策、組織構築に繋がるのであれば、ウェビナー2本を諦めてでも作るべきだと思いますね

 

 

臼井:Web集客支援をする時も、お客様にきちんと説明するのはとても重要なので、とても理解できます。

 

富家:そうですね。自分の上司はその上の人に自分がつくった資料を使って説明します。だから、資料が一人歩きする前提で、平易で分かりやすい資料をつくらなくてはいけません。

その資料に載せる情報を突き詰めると、創出した商談やパイプライン、マーケティング施策のROIや、現状課題と解決策、これからの活動計画しかありません。

実際、僕もマーケティングプランとして、いつも100枚くらいのスライドをつくりますが、実際に経営層に報告している重要なスライドは5枚くらいです。

 

 

瀬川:事業会社のマーケターさんは、社内報告がメインの仕事じゃないという話をよく聞きますが、だからと言って社内報告は手を抜いてはいけないんですね。

 

富家:手を抜いてはダメですね。もちろんあまり気持ちのいい仕事ではないと思います。

ただ、社内理解を得るための調整こそが、リードの創出から受注、取引の最大化までをつなげ、成果を最大化していく上で必要なアクションです

そのためには、社内に向けた発信活動は、とても重要な仕事だと思っています。

 

内製にこだわりすぎない。外注すれば時間とスキルを買える

 

瀬川:先ほどあった目標の達成のために投資してほしいと話しても、「今のやり方を上手くやったらできないの?」との話にもなりそうです。どういったコミュニケーションを取られていますか?

 

富家:よくあるのが「いったん、自分たちだけでやってみよう」となってしまうことだと思います。

うまく説明ができず、必要性や重要性を伝えきれていない時は、予算を使う勇気も出ず、とりあえずで出される結論がまさにこれかと。

 

最終的に内製にこだわるのは大切だと思いますが、内製にこだわり失うものは、成果が創出されるまでのスピードとその成果量だと思っています

 

私たちで言うと、BDR(大手企業をターゲットにしたインサイドセールス)の立ち上げが良い例です。

結論から言うと、立ち上げ期はパートナー企業の力を借りました。理由は、この取り組み自体が有効かどうかを判断するためです。

 

当時、BDRの立ち上げに関して自分たちにノウハウはありませんでした。

仮に、右も左もわからず手探りで、1年半取り組んだとします。1年半後に振り返ってみて、この取り組みはよかったのか悪かったのか、きっと正確に判断できないはず。

でも、BDR立ち上げにノウハウがあるパートナー企業と組んだ場合、半年間取り組んできた結果がしっかりとレポートできます。

 

今、私たちに期待されている成長スピードにおいては、結果が分かるまでのこの「1年」の時間の差は死活問題です。

だからこのパートナーと組んで行う取り組みに投資する価値はありますし、自分たちだけでは「分からない」というレポートを書くことになっていたと思います。

プロと一緒に半年間やってみたレポートなら信じられるので、この1年間の差とアウトプットされるレポートを買う価値はある!と経営層に伝えました。

 

 

瀬川:お金を借りる話とすごく似ているなと思いました。待っていればいつかお金は貯まるけど、貯まるまでの時間を買うのが融資じゃないですか。時間を買う発想なんですね。

 

富家:パートナー企業さんとの取り組みを経て、今は自社にBDRを1名立てました。

当時、パートナー企業さんと作ったトークスクリプトや攻め方などは資産となっているので、外注した価値があったと思っています。

目的達成のためのショートカットにお金を払う価値があることは、経営層はわかっているはずです。

理解されないのは、経営側が正しいと判断する材料を渡せていないだけだと思いますね。

 

 

臼井:ただ前提条件として、経営にアグレッシブさがあるかどうかが問題ですよね。

 

富家:それはとても大事ですね!とりあえず「自分たちで」と、言いたくなってしまうのもわかりますしね。(笑)

 

瀬川:お金をかけてでも時間とスキルを買えるのであれば、内製ではなく外注した方がよい場合もあるということですね。

 

富家:内製を前提にして、採用をかけていくのも選択肢のひとつではあると思いますが、うまく噛み合わなかった時に、動かしづらくなるリスクもあると思います。

リスク回避もそうですし、ある程度のクオリティや成果創出までのスピード感をお金で買えるのであれば、積極的に検討すべきだと思います。なんでもかんでも自分たちで、という考えだけだと、スケールしません。

 

例えば、フリーで活躍されている方を、フレキシブルに組織に組み込んでいくのもいいと思います。

もし、双方が望めば「そのままうちに来ない?」と、ジョインしてもらうこともできます。

 

失敗では怒られない。積極的にチャレンジしてチャンスを掴んでほしい

 

瀬川:最後にマーケティングに従事されている方々に何か応援メッセージなどがあればお願いします。

 

富家:マーケティング組織を立ち上げていく過程は、会社自体を作っていくかのようなダイナミックさがあるなと感じています。

そして、B2Bマーケティングに携わる人の母数が少ないこともあり、個人の評価に直結しやすい環境ともいえるのではないでしょうか。

 

コニカミノルタジャパンは営業が強い会社だったので、入社した当時からマーケティングに関するポジションには伸びしろがありました。

これは弊社だけでなく、世の中の事業会社に起こっていることだと思います。ぜひ、このチャンスをポジティブに捉えて、チャレンジしてほしいなと思います。

 

また失敗を恐れずに積極的にアクションを起こしてほしいです。

怒られるのは、成果が出せないことではありません。

怒られるのは、成果が出せていない事実を振り返って、次のアクションを示せてないことです

 

僕はB2Bマーケティングに関する知識も経験もなかったので、多くの失敗をしてきました。

周りから聞いたことを見よう見まねでやってきた中で、「あれってこういうことだったのか!」と、やっていることの意味に気が付くこともざらです。

 

僕もまだまだまだまだ…初級者です。そういったトライ&エラーを楽しみながら、同じB2Bマーケティングに従事されるみなさんと、頑張っていきたいと思っています。

 

おわりに

今回の取材では、コニカミノルタジャパンの富家翔平さんに、B2Bマーケティング組織の立ち上げから、成果を上げるまでの取り組みについてお伺いしました。

お話を聞いて感じるのは、地道な努力の積み重ねの重要性です。

仕組みをつくり、コミュニケーションを深め、1つずつ課題を解決していく。忍耐強くこれらを取り組んでいった先に、大きな成果があるのかもしれません。

 

(取材:臼井教司・瀬川義人、編集・撮影:瀬川義人)