現場が一枚岩になってはじめて、Web施策は進みだす。Prompta. 伊藤公助さんに聞くWeb集客を進める仕組みづくりの秘訣とは

地方で活躍するWebマーケターさんにお話を聞くこのシリーズ。

第9弾となる今回のゲストは、北海道札幌市を拠点にWebマーケティング支援をされている、株式会社Prompta.の伊藤 公助さんです。

伊藤さんは現在、SEOを中心としたWebマーケティング支援のほか、事業会社に参画し企業の中からマーケティングを推進されています。

そこで今回は、伊藤さんに地方のWebマーケティングの実情と成果を出すために何をすべきかについてお話を聞いてきました。

地方でWeb集客に携わる方は、ぜひご覧ください。

株式会社Prompta. 伊藤公助さん

北海道出身。出版社、学校法人の広報を経て、SEOの支援会社に転職し、2013年に独立。現在は、札幌でデジタルマーケティング会社Prompta.を経営するほか、代理店や事業会社のマーケティング顧問やアドバイザーとしても活動している。

Webサイト:https://prmpta.co.jp/
Twitter:@self0828

今までの勝ちパターンが通用しなくなって、焦り始めている

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瀬川:伊藤さん、今日はよろしくお願いします。伊藤さんは、普段から中小企業の方とお話する機会も多いかと思いますが、現状についてどのように見ていますか。

伊藤:最近相談いただく方の話を聞くと、みなさんちょっと焦っている感じがします。2019年くらいまでは「Webをやらなきゃいけないとは思うけど、今は忙しいから…」みたいな感じでした。これまでは東京とか比較的大きな企業が、投資として進めていたところが多い印象です。

しかし、ここ数年は「地方もいよいよやらなきゃいけない」という風潮になってきました。事業者さんとお話すると、「どう始めてよいか分からないから教えて欲しい」と前のめりになってきた感覚があります。「今までのやり方でよいのかな」「新しい風をいれないと、5年先くらいが危ないんじゃないか」という経営者の嗅覚があるのかもしれません。


瀬川:みなさんは、どのように焦っているのでしょうか。

伊藤:目先の売上はあるけど、今までの勝ちパターンが通用しなくなったり、Webを使ってうまく集客する東京の会社が登場したりして、ジワジワと売上が減っていく感じですね。数字として、嫌な下がり方をしてきたといった兆しを感じているんだと思います。

今は、お客様がオンラインでセミナーを受けたり、資料請求したりして、自ら情報収集することが当たり前になってきています。しかし、いつまでも対面営業にこだわり、インターネット上に情報がないゆえ、受注率がじわじわ下がってきているようです。

瀬川:その波がコロナ禍で一気に来た感じですか。

伊藤:おそらくコロナ禍からですね。本当に勝ちパターンが通用しなくなってしまった。前にできていた方法がダメになり、それが積み重なっていくと、首を締められるような怖さがあります。大企業よりも、特に100人以下の中小企業の経営者や営業部長の方のほうが感じている気がします。

Web集客を進める上で一番の壁は、社内が一枚岩にならないこと

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瀬川:そういった危機感を感じている企業さんが、Webに取り組む上でぶつかる最初の壁は何なのでしょうか。

伊藤:何かをやりたいと感じている方は熱量が高いですが、現場で働く方はそこまで危機感を持っていないことも多いんです。改革をしようと現場に行っても、なかなか一枚岩にならない。軋轢が生まれて、前より仕事がしにくくなったと反発されて、協力してもらえないことが多いですね。

僕が役員で参画している会社は、まさにそうでした。最初に入ったときは、相当揉めました。ある時は、「ネットをやっているか知らないが、よそ者が来て偉そうに」と、ボロクソに言われました。

あとで分かったのは、今まで屋台骨のように会社を支えていた人たちが、自分たちの仕事がなくなると恐れていたんです。だから「自分たちをないがしろにするな」と言ったり、熱量が高くない人たちが「俺の仕事を増やすな」と加勢したりしていたみたいで。

とても強烈な経験でしたが、僕は決して敵ではありません。だから時間をかけてお話しながら、納得いただくしかありません。「現場で1円でも多く売れるために頑張っているのは一緒ですよ」と。


結局、役員になって半年間はWebの施策は何一つできていません。Webサイトの改善ですらやっていません。何をやっていたかと言えば、ひたすら「社内説得」です。

協力者を増やすための話し合いを半年間やって、それだけでお金をいただいていた状態です。でも経営者からしたら、「Webを頑張っていくぞ」というマインドに全社員がなることは、たとえ何百万円かかってもやってほしいことです。逆にそのマインドになれば、後は早いんですよ。

成果を出すだけでは、みんなは付いて来ない

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瀬川:逆を言えば、Webに取り組むマインドになる前に、施策を無理やり進めてはうまくいかないのでしょうか。

伊藤:うまくいきません。これは僕が支援側として失敗しています。

最初は「結果さえ出せば、みんな付いて来てくれる」と思っていました。しかし、実際は結果を出すほど、「営業の成果が反映されていない」とか「変な客からの問い合わせが増えたんだけど」とクレームが増えていきました。Webでの成果は出ていましたが、プロジェクトとしては失敗した感じになりましたね。


瀬川:一時的にはうまくいっても、長続きしないんですね。

伊藤:そうですね。特に評価基準があいまいな会社だと、他部署の売上が伸びてくると、「もう俺たちは用済みになるのではないか」と怖さを感じてしまう人がいるんですね。そうなると、反発が生まれてしまいます。

「Webのせいで、こんな問題が起きている」とか、ほんと小さなネガティブな書き込みを大げさに問題視して報告するとか。僕からすると、良く見つけたなという感じなのですが、なんとかして潰そうみたいな意識になってしまうんですね。

もう少し進むと、Webでないところを引っ張っていたキーマンが退職してしまって、雰囲気が悪くなって、さらに退職が続き、それゆえ新規採用もうまくいかないなんてこともあります。採用ができないって、地方だと死活問題なんですよね。だから、ただ数字だけを上げればよいわけではないんです。

社内に協力者が増えるまで、心から納得してもらう

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瀬川:そういった厳しい状況の中で、伊藤さんはどのようにみなさんを説得し、一枚岩にしていったのでしょうか。

伊藤:心から納得してもらえるように、どれだけ時間とお金をかけるかですね。経営者からは「1年かかってもいいから、やってほしい」と言われていましたが、僕の場合は、半年間と決めていました。そのためには、とにかく協力者を増やすしかありません。

Webは特別な知識・技術であって、売上そのものを増やすものではありません。社内で協力してくれる人が増えるほど、Web集客の成功確率も上がっていきます。そのための土壌をどれだけ作れるかですね。Webサイトが1文字も変わらない状態で、1年我慢できるかが勝負です。



瀬川:Web屋としては、相当辛いですね。

伊藤:最初は本当に嫌でストレスでした。胃に穴が空くかと思いましたよ。

臼井:週1回程度で行っていたのでしょうか。

伊藤:コロナ禍だったので、オンラインミーティングも多かったですが、1日で3部署とかと打ち合わせしていました。それも最初は、全然集まってくれなくて。8人いる営業部隊に声をかけて日程調整したのに、直前で「アポが入ってしまって」と言われて、結局2人しか参加しないことが3ヶ月くらい続きました。集まっている人たちも「もう話す内容がないので、営業に行ってきてもいいですか?」と言われる始末です。


瀬川:説得する方法は、キーマンに会いに行くところがスタートなんですか。

伊藤:そうですね。あとは経営者やオーナーが権限でやらせるパターンですが、成功確率は50%ほどだと思います。逆を言えば、半分は失敗してしまう。ただただ退職者が増えてしまうパターンもあるので。

ただボトムアップで時間をかけて説得するパターンは、ほぼ100%成功しているので、時間はかかっても成功確率は高いと思います。確かに1年とか遅れてしまうのですが、協力者が増えたら2~3ヶ月で遅れは取り戻せるので。長期的に見たら、きちんと納得してもらってから進めるほうが、もっと差は大きくなると思います。

たとえ怒りでも文句でも。本音を言ってもらってからがスタート

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瀬川:勝手にリスケされてしまうような状態から変わったきっかけは何でしたか。

伊藤:すごく文句を言われるようになったことです。今までミーティングに出てくれなかったのに、出てくれるようになったんです。僕が「参加してくださって、ありがとうございます」と話したら、「嫌味か?わざと出てなかったの、分かっているだろ」と言われたんです。

その時「これは来たな」と思いました。そこで、用意していた議題は横において、言いたいことを言う場にしたんです。言いたいことを言ってもらえる環境ができて、初めてこちらの話も聞いてもらえます。話してもらえないなら、怒りでも何でもいいので感情をぶつけてもらえばいいんです。そうすれば、一歩前に進めるんです。最初は凹みますけどね(笑)


最初に関わった1件目の会社では、「やばい、僕が組織を壊してしまった…」と汗しか出なかったですね。その経営者に「営業所の人をめちゃくちゃ怒らせてしまいました…」と相談しに行ったら、その方はこう言うんです。「話は聞いてるけど、あの後聞いてみたら『あいつの言うことも一理ある』って言ってたよ。伊藤さん、何か言った?」と。

ビックリして、僕も「え?そうなんですか?」と言ってしまいました。次にミーティング設定したら話を聞いてくれますか、と聞いたところ、その経営者の方も「話せるように言ってみるよ」と言ってくださって。そこでミーティングを開いたところ、とても落ち着いて議論できました。

怒らせてしまった営業の方からは、「言いたいことを言って怒っていたら、自分のなかで間違っていることも少し理解できた」と言ってくれました。説得していると無視されることも多いので、嫌味を言ってもらえるようになったら、話を聞いてもらえるサインですね。


瀬川:腹を割った話ができるようになって、ようやくスタートラインなのですね。

伊藤:ビジネスの現場で、怒りを露わにするって良いことではないじゃないですか。全員社会人歴が長いので、常識がある人だと押し殺すのですが、それを乗り越えて腹を割って話せるようになると、これほど深い絆が生まれるのかと気づきました。深い絆がないと、ビジネスは本当にうまくいきませんね。

関係性を作るポイントは、とにかくまず不満を聞くこと

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瀬川:話ができる関係性ができてはじめて説得すると思いますが、話される際にポイントはありますか。

伊藤:まずは不満を全部聞きますね。「何がそんなに不満なんですか」「何が腹立つんですか」と。すると、結構話をしてくれます。「部下を守らないといけないのに、部下の仕事を奪われていると思う」とか、「難しい横文字を使って、俺らを煙にまこうとしている」とか、「今まで売上を立ててきた俺らをないがしろにしている」とか。

結局のところ、自分や仲間、領域を必死で守ろうとしているんですよね。だから「そうではないですよ」ということを、さまざまな言葉でお話しています。


瀬川:私たちは味方であることをひたすら伝えるのですね。

伊藤:僕らは、あくまで営業の方がこれまで培ったスキルをお借りして、Webに転用して、売上を上げているだけです。営業のプロセスに入るためにWebからお客様を導いているだけなので、営業が不要になることはなく、むしろ協力なしには成り立ちません。ていねいにお話しすることで、99%くらいの方は納得してくださいますね。



瀬川:その状態に至るまでには1年くらいかかるんですね。伊藤さんの中で、一枚岩になった感覚があるのはどういった時ですか。

伊藤:自分の領域を一番守ろうとしていた人が、心を開いてくれた時ですね。その人が話を聞いてくれるようになった瞬間に、「これはいけるな」と思います。反発していた集団が1つずつ変わっていくと、連鎖的に変わっていき、会社の雰囲気が変わっていきます。やはり最初の1個目が大変ですね。

プロジェクトを進めるためには、マネージャーを巻き込む

瀬川:どういった人たちとプロジェクトを進めるのでしょうか。

伊藤:パターンはありますが、主には事業部長といったマネジャーの方たちと集まって話して、現場に落としてもらいますね。あとはプロジェクト単位で関わることもあります。例えば、営業と広報チームが一緒にセールスレターをつくることになった場合、最初はマネジャー同士で話し合ってもらい、スタッフに何の仕事を振ったらよいか決めていただいています。


瀬川:担当者レベルでなく、事業部長クラスの方と進める理由は何かあるのでしょうか。

伊藤:僕が何かお願いするということは、スタッフの稼働時間を使わせてもらうことになります。だから、この作業ににはどのくらい時間がかかるかを見積もって、マネジャー、いわゆる決裁権者の方に「この作業には◯時間がかかるが、お願いしたい」と話すんです。

すると、そのマネジャーの方は「それなら、Aさんが得意そうだから聞いてみるね」「想定より時間が足りなさそうだったら、調整するので言ってください」と言っていただけるんです。ここがマネジャーを巻き込むメリットです。

逆に、担当者さんレベルで進めることもありますが、施策が止まってしまうことがよくあります。「Webの仕事なんですが、上からいろいろお願いされて動けなくて…」と。Webは施策が連動して成果につながるので、1つ施策が止まってしまうと、うまく進まなくなってしまうんですよね。


瀬川:なるほど。リソースを確保して、仕事が進むように調整するのですね。

伊藤:「Webで成果を出すために、時間と人を貸してくださいね」と確約をもらうことが大事ですね。ビジネスをしている以上、マネジャーさんにも頼みたいことはあるはずです。今は働き方改革の流れもあり、無理な働き方をさせるわけにはいかないので、うまく調整いただいている感じですね。

社内の協力を得るためには、成果と感謝をとにかく伝えること

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瀬川:社内の協力を得ていくためには、大事にしていることはありますか。


伊藤:やはり協力してくださった方に、成果として出てきた数字をわかりやすく、ダイレクトで伝えるようにしています。「協力してくださったおかげで、めちゃくちゃ反響ありましたよ。昨対比でも異常な数字です」と。感謝と一緒に成果もきちんと伝えることが大事ですね。


瀬川:きちんと伝えるべき理由は何なのでしょうか。

伊藤:もっと協力してほしいからですね(笑) 僕はSEOの施策に取り組むことが多いのですが、自分がつくった記事が検索で評価されるって嬉しいみたいなんですよ。仕事においては給料以外にもやりがいは重要です。その点、「多くの人に見られていますよ」という結果は仕事の喜びにもなるので、きちんと伝えるべきだと思います。


瀬川:伝えたあとは、どんな反応があるんですか。

伊藤:ストレートに「嬉しいです」と言ってくださいますね。あとは「ちょっと自信がなかったけど、こんなに成果が出て嬉しいです」とか。こういったことがあると、次からも喜んで協力してくれます。


瀬川:地道にやっていくことが重要なのですね。

伊藤:そう思いますね。ほとんどの場合、超難易度の高いSEOみたいなことをしなくても、ちゃんと結果が出ることが多いです。

Webマーケティングは、個人よりも団体の総力戦になってきています。だからいつまでも個人技で解決しようとせず、頼れる人を見つけて、頼るところは頼ることに比重を置いたほうがうまくいく可能性が高いのではないかと思います。1人でやっている時に比べて、頼れる人が増えると、中長期的には大きな差になりますね。

施策を始める前に、Web施策の全体像を描く

瀬川:Web施策が進められる素地ができた後はどうするのでしょうか。

伊藤:ここでようやく戦略づくりに入ります。最初から全部の課題をSEOで解決しようとすると、絶対失敗します。「やっぱりWebはうまくいかなかった」となると最悪です。

だから僕は、売れるための地図を簡単につくります。そして「Webで売るためには結構複雑な過程があって、Webのコンテンツが貢献できるのはここだけですよ」とお話しするんです。するとクライアントも「この部分を頑張らないと、売れなさそうだね」と理解してもらえますね。


瀬川:Webの施策の全体像を描く話がありましたが、現場に落としていくコツはありますでしょうか。

伊藤:Webを調べて少しかじった情報ではなく、きちんと調べて考えた上でやってもらうことですかね。例えば、「他社でうまくいった記事を真似て、ウチでもつくってみました」と持って来ていただいても、困ってしまいます。記事で言えば、「世の中で求められていること」×「自分たちだから書けるオリジナルな情報」の2軸で考えなくてはいけません。

だから、クライアントの担当者さんにきちんと調べて、言語化してもらうようにしています。その上で僕が「こう思いませんでしたか?」と問いかけると、「確かにそう感じました」と気付きを得て、理解いただけるんです。

商品の問題は、広告では解決できない

瀬川:きちんと調べてもらうことが大事なんですね。なぜ調べてみることが重要なのでしょうか。

伊藤:例えば、シャンプーを例に考えてみましょう。自社のシャンプーは、ダメージケアが売りです。一方で、世の中では、ナイトケアが流行っています。だったら自社の広告でも「ナイトケア」を入れてみたら、もっとクリックされると考えてみたらどうなるでしょうか。

確かに世の中では、ナイトケアが求められているかもしれません。しかし、これまで一度もナイトケアなんて謳ったことはありません。急にナイトケアを訴求しても、絶対にうまくいきません。そこで戦うべきではないのです。もし本当にその訴求をしたいなら、新しい商品自体をつくらないといけません。

商品の問題は、広告で解決できません。私が質問する意図は、ダメージケアを本当に必要な人はどんな人なのかを、もう少し深掘りしてほしいんです。だから聞くんです。「なぜ髪を痛めたらダメなんですか。別に死ぬわけじゃないし、いいんじゃないですか?」と。

数字しか見なくなると、エンドユーザーを見失いやすくなる

瀬川:もっとエンドユーザーをきちんと見ようということなんですね。事業会社の方は、エンドユーザーのことを理解しづらいのでしょうか。

伊藤:おそらく分かっていないことが多いと思います。これは仕組み上、仕方がないことかもしれません。

事業会社の方は、やはり売上という数字で管理されています。お客様から「ありがとう」と言われた数なんて測れませんからね。すると、自然と数字でしか見れなくなってしまい、お客様目線が薄くなってしまうんだと思います。店頭のレジにお客様がいることを忘れてしまう。流行りに飛びついて、派手なプロモーションを打つ。手っ取り早く数字が作れてしまう施策に偏ってしまう。こういったことが起こりやすいのです。


瀬川:実際に事業会社の方にエンドユーザーを見つめてもらうためには、どういったことをしていますか。

伊藤:僕の得意分野はSEOなので、やはり具体的な検索キーワードを見せますね。Search Consoleを見てみると、1つくらいなぜか評価されているキーワードが見つかるものです。そのキーワードの検索結果を見せて、「検索してみたら、ウチのWebサイトって2位に表示されてますよ」と伝えます。あとはAmazonのレビューとかも見せますね。

すると事業会社の方から「それは、めっちゃ嬉しいです。こだわっているので。」と話しはじめてくれます。そこからいろいろ話し合って、「だから、お客様は買ってくれているんですね」と気づいてもらう感じです。なぜお客様は買ってくれるのかを考えないと、本質的にモノは売れません。

たった一人のユーザーの声から、多くの発見と仮説が生まれる

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瀬川:エンドユーザーをより深く知るためには、どういったことをすべきなのでしょうか。


伊藤:やはりインタビューですね。仮説を持つことは、とても大事です。データは、あくまで事実を伝える材料にはなりますが、データから新たな発見はほとんどありません。その発見をさせてくれるのが、たった1人のユーザーの声なんです。

インタビューをすることで、発見があり、新しい仮説が見つかる。そもそも目の前の1人すら理解できなくて、100億とか売れるわけないじゃないですか。目の前の1人がお金を出してくれて、それが積み上がって、何億、何百億となる。そのことを忘れないためには、インタビューするしかないですね。


瀬川:実際にインタビューをしてみると、事業会社の方はどういった反応をされるんですか。

伊藤:その時点ではあまり反応がないんです。例えば、僕らがインタビューしてみると、仮説が20個くらい見つかるんですよ。それぞれのインサイトには名前をつけます。「もやもやインサイト」とか「俺様天才インサイト」とか。ただその時点では、僕らも「ふーん」って感じなんですね。

その後は、実際に500人くらいにアンケート調査をしてみるんです。すると、「俺様天才インサイト」に合致する人が世の中には結構いることに気づくんです。ここで僕は「よっしゃー!」ってなりますね(笑)


あとは、どうやってそのインサイトを持つ人の心理を刺激しようかを考えていくのが、クリエイティブです。クリエイティブには大きく2パターンがあります。

先の「俺様天才インサイト」の例で言えば、「あなたは天才ですよね」と言ってモノを買ってもらうか、「自分は天才だと思っているあなた、間違っていますよ」と揺さぶったほうが買ってもらうかです。それぞれをABテストして、反応がよいほうを探していきます。

アンケートで分かるのは、属性を持つ人のボリュームなので、そこからクリエイティブに落としていく流れです。すべてのスタートは、お客様の根っこにある心理ですね。


瀬川:そこまで行くと、クライアントの反応も変わってきますか。

伊藤:インサイトが見つかると、「おっ」となりますね。ペルソナづくりで、どこでセグメントを切るかがポイントになりますよね。僕らは、デモグラフィック(=性別や年齢といった属性情報)でペルソナはつくらず、サイコグラフィック(=心理や価値観)でセグメントを切ります。

アンケートを取って、そのインサイトを持つ人のパイの大きさが分かる。マーケットで、こういった考えを持つ人が商品を買う。この訴求が分かると、強いですね。

リソースが限られているからこそ、勝ちパターンを見つけて戦略的に投資する

瀬川:逆に言えば、顧客のインサイトが分からないまま、大きな投資をしたらダメってことなんですか。

伊藤:そうですね。ダメだと思います。例えば、TikTokが流行っているからといって、TikTokにいるインフルエンサーに依頼したら、たぶん失敗します。どういうユーザーがいるか知るために、使ってみるのはよいと思いますけどね。

自分で使ってみて、媒体の特長を理解する。ユーザーが「面白い」と思う心を理解して、文脈を共有できてはじめて施策に使えます。特に地方では、飛び道具的に流行っている施策に飛びついてしまいがちなんですよね。


瀬川:組織として取り組むなら、きちんと勝ちパターンを見えてから投資を進めることが大事なんですね。

伊藤:大量にリソースがあって、お金をばら撒いてもどれか当たればいい、みたいな手法が使える企業なら、僕は全然よいと思います。でもリソースが限られていたら、どこに集中して投資したら一番儲かるかを考えること、まさに戦略が一番大事です

その起点となる仮説を適当につくっても上手くいくはずがありません。たまたまホームランを打つかもしれませんが、あとは三振を繰り返すだけです。とにかく打率を上げるためにやる感じです。

 

正直なところ、僕でも失敗します。ある時は、何千万円の損失を出したこともあります。ただ、なぜ上手くいかなかったかは死ぬほど考えます。「AもBも当たらないのはなぜだろう。データから必ずインサイトを持つ人はいるはずなのに」と。

もちろん事業が潰れるほどの投資はしないですし、投資できる上限額も決めます。また事前に、もしうまくいかなかったら、失敗から何を学べるかも決めていますね。

「好きに動いてください」と外注するのはやめたほうが良い

瀬川:Web集客を進める上では、内製と外注の使い分けが重要じゃないかと思っています。どのように外部パートナーと付き合うとよいのでしょうか。

伊藤:よいパートナーがいたとして、お願いする時に重要なのは、情報をあまり出し渋ったり、「能力を発揮して好きに動いてください」とお任せしないことですね

特に最初のうちは、「こういうことをお願いしたいけど、可能ですか?」とか「自社のリソースはこうで、この仕事をお願いできると、自社のスタッフによい刺激になって事業が上手く回ると思うのですが」といった感じで、しつこく確認するとよいです。

支援側になって思うのは、「好きにやってください」と言われると、結構困ります。どのくらいリソースがあるかが分からないと動きづらいですし、何を言ってよいかも分かりません。また自社の弱みや公にしてほしくないことなども事前に言ってもらえると、気をつけることもできます。

事業者さまには、発注の意図や要望をきちんと言語化してもらい、リソースをどの程度使ってよいかを示してもらえるとよいと思います。


瀬川:外部パートナーさんにきちんと説明して、どこがOKで、どこがNGかを伝えることが重要なんですね。ちなみに、最近Web集客を内製化したいとの声をよく聞きますが、伊藤さんはどのように思われますか。

伊藤:外部にお願いしつつ、最終的なアウトプットに関しては、社内で責任を持つべきですね。例えば、記事制作だと初稿をつくってもらうことは外注してもよいと思います。ただ編集や監修、ファクトチェックは内製で行うべきですね。外部に任せすぎると、チェックが雑になって、最後には誰もチェックしなくなります。万が一まずい表現のままで公開されると、あとで大問題になることもあります。

だから僕の場合、契約書に「最終成果物に対して、外部に責任は問わない」形にして、契約の段階でもきちんと説明しています。すると揉めないですし、外部のパートナーさんも喜んでくれて、本気で取り組んでくれたり、攻めた提案をしてくれたりしますね。

Web集客に近道はない。一人ひとり仲間を増やしていくことがスタート

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瀬川:最後に中小企業のWeb集客に携わっている担当者さん向けてアドバイスがあればお願いします。

伊藤:僕はSEOに詳しいと思われているので、もしかしたら技術的に高度な、裏技みたいなものを期待されているかもしれませんが、正直そんなものはありません。

近道といえば、一人ひとり仲間を増やしていくしかないです。まさにONE PIECEでルフィが海賊王になるために、クルーを増やしていったように、いかに仲間を増やせるかのゲームだと思っています。

きっとその中心で人を引っ張っていくメンバーになれていれば、仕事は絶対楽しいはず。マーケティングの仕事は、マーケティング以上のものを得られます。いつまでも1人でやっているのはすごくもったいない。ぜひ仲間集めを全力でやってほしいですね。

おわりに

この記事では、Prompta.の伊藤公助さんに、地方企業がWeb集客を進める上で重要なポイントをお聞きしてきまいた。

取材を通して感じたのは、Web集客はスキルや知識以上に、いかに人を巻き込んでみんなで進めるかが結果を左右すること。

協力してWeb集客を進める雰囲気や文化をつくることが、最短距離で成功する鍵なのかもしれません。

聞き手:臼井、瀬川
文・写真:瀬川