採用ペルソナとは?採用ミスマッチを防ぐ具体的な作り方を解説

せっかく時間とコストをかけて採用した人材が、自社の社風に合わなかったり、早期離職してしまったり。このような「採用のミスマッチ」は、企業にとって大きな痛手です。

採用のミスマッチは、下記のような課題を引き起こします。

  • 採用コストの増加
  • 教育コストの増加
  • 組織の生産性低下
  • 定着率の低下

では、どうすれば採用のミスマッチを防ぎ、自社にぴったりの人材を採用できるのでしょうか?

その答えは「ペルソナ」にあります。

ペルソナとは、自社が求める理想の人材像を具体的に定義したものです。自社が求める人物像を明確にすることで、採用活動の軸が定まり、効果的な戦略を立てることができます。

この記事では、採用ペルソナの基礎知識から具体的な作成方法、そして活用方法までを詳しく解説します。採用ミスマッチに悩む企業担当者の方、必見の内容です。

ぜひ最後まで読んで、自社の採用活動のヒントにしてみてください!

目次

1. 企業によくある採用活動の課題

近年、優秀な人材の獲得競争が激化する中、従来の採用活動では多くの課題が露呈しています。

特に、ターゲティングの不正確さ、選考期間の長期化、採用ミスマッチの発生は、企業にとって大きな損失となってしまいます。

ターゲティングの不明確さ

従来の採用活動では、求人情報サイトや新聞広告などを活用し、幅広い層へアプローチしてきました。

しかし、これらの手法はターゲティングが難しく、自社に合致しない人材からの応募も集まってしまう傾向がありました。

その結果、選考にかかる時間とコストが増加し、採用担当者の負担が大きくなっていました。また、ミスマッチが生じた応募者の中には、内定辞退してしまうケースも少なくありません。

リクルートの調査によると、2023年度の新卒者の内定辞退率は65.8%と高い水準にあり、年々増加傾向にあります。

recruit_image01参考:リクルート(就職みらい研究所)「就職プロセス調査(2023年卒)2023年3月(卒業時点)内定状況」

このような内定辞退は、企業にとって採用活動にかかったコストが無駄になるだけでなく、優秀な人材を獲得するチャンスを逃してしまうという、大きな損失につながります。

採用ターゲットを明確化し、自社に合った人材に効果的にアプローチできる採用手法の導入が急務と言えるでしょう。

選考期間の長期化

従来の採用活動では、選考フローの煩雑さや、採用担当者のリソース不足などにより、選考に時間がかかってしまうケースも発生します。

リクルートの調査によると、2023年卒新卒者の理想の就職活動期間は平均で7.37ヶ月であるのに対して、実質就職活動期間の平均は8.36ヶ月と約1ヶ月長くかかっています。

recruit_images02参考:リクルート(就職みらい研究所)「就職白書2023|就職活動・採用活動の振り返りと今後の見通し」

また、約3割の学生が「早く内定を獲得して就職活動を終えたかった」と回答しています。

選考期間が長期化することで、他社から内定を得てしまい、内定辞退につながってしまう可能性があります。

就職活動を終了した理由として、約3割が、早く内定を取得して活動を終えたかったという理由で就職活動を終了参考:リクルート(就職みらい研究所)「就職白書2023|就職活動・採用活動の振り返りと今後の見通し」

採用ミスマッチの発生

選考過程でどれだけ見極めようとしても、入社後に採用ミスマッチが明らかになるケースは避けられません。

採用ミスマッチとは、入社後に社員が期待していた仕事内容と実際の仕事内容が異なっていたり、企業文化に馴染めなかったりすることです。

このようなミスマッチは、社員の早期離職を招く大きな要因となります。厚生労働省の発表によると、令和2年度における新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率は大卒で31.2%、高卒で36.9%と高い水準にあります。

早期離職は、企業にとって採用活動にかかったコストだけでなく、教育や研修に費やした費用も無駄になるという、大きなコストとなります。

さらに、離職者の補充や引き継ぎに伴う業務の停滞、チームのパフォーマンス低下、ひいては顧客満足度の低下にもつながる可能性があります。

2. 採用課題にペルソナがどのように活用できるか?

採用活動は、企業の成長を支える重要なプロセスですが、多くの企業が共通の課題を抱えています。

ここでは、採用ペルソナを活用することで解決できる、代表的な3つの課題をご紹介します。

自社に合う人材像が曖昧で、採用基準が定まらない

「どんなスキルを持った人が欲しいのか」「どんな価値観を持った人が自社に合うのか」といった具体的な人物像が曖昧なまま採用活動を進めると、ミスマッチが生じやすく、早期離職や採用コストの増加に繋がります。

採用ペルソナを作成することで、自社で活躍できる理想の社員像を具体的に定義できます。

年齢、性別、職務経験、スキル、価値観、興味・関心など、様々な要素を盛り込むことで、採用担当者間での認識を統一し、誰を採用すべきか明確になります。

例えば、

  • 20代後半から30代前半の営業職経験者
  • 新規顧客開拓に意欲的で、コミュニケーション能力が高い
  • チームワークを重視し、協調性がある

といった具体的なペルソナを設定することで、採用基準が明確になり、効果的な採用活動に繋がります。

採用活動に時間がかかり、なかなか人が集まらない…

従来の採用手法では、不特定多数に向けて情報を発信するため、自社に合った人材に効果的にアプローチできていないケースが多く見られます。

時間をかけて採用活動を行っても、なかなか人が集まらず、採用コストが膨らんでしまうという課題を抱える企業も少なくありません。

採用ペルソナを活用することで、この課題を解決できます。

採用ペルソナは、ターゲット層の興味・関心や情報収集方法を深く理解し、ペルソナに合わせた求人媒体を選定し、ペルソナの心に響くメッセージやキーワードを盛り込んだ求人広告を作成することで、効果的にアプローチすることを可能にします。

例えば、

  • ペルソナが利用するSNSやWebサイトに広告を掲載する
  • ペルソナのキャリアパスに合わせた情報を発信する
  • ペルソナが共感できるような企業文化や価値観をアピールする

これらの施策により、自社に合った人材からの応募を増やし、採用活動の効率化を図ることができます。

採用しても、すぐに辞めてしまった…

入社後に「思っていた仕事と違う」「会社の雰囲気に合わない」といったミスマッチを感じ、早期に離職してしまう社員は少なくありません。

このような早期離職は、企業にとって大きな損失となります。

採用ペルソナを活用することで、自社の社風や仕事内容に合った人材を採用しやすくなります。面接でペルソナに基づいた質問をすることで、候補者の価値観や仕事に対する考え方を深く理解し、入社後のミスマッチを未然に防ぐことができます。

例えば、

  • 自社の価値観に共感できるか
  • 仕事内容に対してどのようなモチベーションを持っているか
  • チームワークを重視する環境で働くことができるか

といった質問をすることで、自社にマッチする人材かどうかを見極めることができます。

3. 採用ペルソナ作成の準備

採用ペルソナを作成する前に、以下の3つの準備をしっかりと行うことで、より精度の高いペルソナ像を描くことができます。

採用目的の明確化

「なぜ採用するのか?」「どんな人材を求めているのか?」を明確にすることが、採用ペルソナ作成の第一歩です。

  • 自社のビジョンや目標を再確認する
    どのような未来を目指しているのか、そのためにどんな人材が必要なのかを具体的に考えましょう。
  • 求める人物像を具体的に書き出す
    必要なスキルや経験はもちろん、価値観や仕事への取り組み方なども細かく書き出すことで、より明確なペルソナ像が見えてきます。
  • 各部署の意見をヒアリングする
    現場の意見を聞くことで、より実態に即したペルソナを作成できます。

既存社員の傾向分析

現在、自社で活躍している社員には、どのような共通点や特徴があるでしょうか?

  • パフォーマンスの高い社員に注目する
    どのようなスキルや経験、価値観を持っているのかを分析しましょう。
  • 社員インタビューやアンケートを実施する
    直接話を聞くことで、数値化できない情報も収集できます。
  • 人事評価データなどを活用する
    客観的なデータから、活躍している社員の特徴を把握しましょう。

採用市場の調査

自社が採用したい人材は、どのような企業に魅力を感じているのでしょうか?

  • 競合他社の採用状況を調査する
    どのような人材を採用しているのか、どのような求人広告を出しているのかを参考にしましょう。
  • ターゲット層の動向を把握する
    どのような情報媒体を利用しているのか、どのような価値観を持っているのかを理解しましょう。
  • 人材紹介会社やエージェントに相談する
    専門家の意見を聞くことで、より深い情報を得られます。

4. 採用ペルソナ設定の手順

採用ペルソナ作成の準備が整ったら、以下の手順で具体的なペルソナを設定していきます。

  1. ターゲットとなる求職者を特定する
  2. 求職者ペルソナを作成する
  3. 採用ペルソナに基づいたサイトのコンテンツを設置する

具体的なペルソナ設定の手順については、次の章で詳しく解説していきます。

ステップ1:ターゲットとなる求職者を特定する

まず、採用ペルソナを設定する前に、ターゲットとなる求職者を特定する必要があります。具体的には、以下の属性を検討します。

項目 内容
職種 採用する職種を具体的に設定します(例:営業、エンジニア、デザイナー)
経験・スキル 職種に必要な経験やスキルを明確にします(例:営業経験3年以上、特定のプログラミング言語スキル)
年齢・性別 求める年齢層や性別を検討します(例:20代後半から30代前半、男女不問)
学歴 求める学歴を検討します(例:大卒以上、専門学校卒)
価値観・志向性 自社で働くことに対する価値観や志向性を明確にします(例:成長意欲が高い、チームワークを重視する)

ステップ2:求職者ペルソナを作成する

ターゲットとなる求職者を特定したら、求職者ペルソナを作成します。

求職者ペルソナとは、架空の人物像として、ターゲットとなる求職者の詳細なプロフィールを設定したものです。

具体的には、以下の情報を設定します。

項目 内容
ペルソナの名前 ペルソナに名前をつけることで、より具体的な人物像としてイメージしやすくなります。(例:田中一郎)
顔写真  ペルソナに顔写真をつけることで、より具体的な人物像としてイメージしやすくなります。
プロフィール ペルソナの年齢、性別、学歴、職歴、スキル、価値観、志向性などを設定します。
課題・ニーズ ペルソナが抱えている課題やニーズを設定します。(例:キャリアアップしたい、ワークライフバランスを重視したい)
求める情報 ペルソナが求めている情報を設定します。(例:会社の成長性、福利厚生、社風)

ステップ3:採用ペルソナに基づいたサイトのコンテンツを設置する

求職者ペルソナを作成したら、採用サイトにペルソナに基づいたコンテンツを作成します。具体的には、以下のコンテンツを作成・改善します。

項目 内容
求人情報 ペルソナが求める情報(給与、休日、福利厚生、キャリアパスなど)を具体的に記載する
会社紹介 ペルソナが知りたい情報(企業理念、事業内容、社風、社員の声など)を魅力的に伝える
社員インタビュー ペルソナが共感できる社員インタビューや座談会を掲載する
よくある質問 ペルソナが抱えている疑問(選考フロー、入社後のキャリアなど)に答える

4. 採用ペルソナ設定のポイント

採用ペルソナ設定は、採用活動の成功に欠かせない重要な要素ですが、適切な方法で設定しないと、効果が得られなかったり、採用活動に悪影響を及ぼしたりする可能性もあります。

採用ペルソナを作成する際は、以下のポイントに注意しながら作成しましょう。

思い込みや偏見に基づいたペルソナを作成しない

採用ペルソナを作成する際には、客観的なデータに基づいて作成することが重要です。

過去の経験や個人的な意見、固定観念に頼ってしまうと、偏ったペルソナ像が出来上がってしまい、結果的に自社に合った人材を見逃してしまう可能性があります。

例えば、「若い世代はデジタルネイティブで、ITスキルが高いはずだ」という思い込みでペルソナを作成すると、ITスキルは低くても、自社で活躍できるポテンシャルを持った人材を見逃してしまうかもしれません。

常に客観的なデータに基づいてペルソナを作成し、偏見や思い込みを排除することが重要です。

ペルソナは定期的に見直す

事業環境や採用市場は常に変化しています。そのため、一度作成したペルソナをそのまま使い続けるのではなく、定期的に見直すことが重要です。

例えば、

  • 自社の事業内容や戦略が変更された場合:求める人材像も変わる可能性があります。
  • 採用ターゲット層が変化した場合:ペルソナの年齢や経験、価値観などを再検討する必要があります。
  • 競合他社の採用状況が変化した場合:自社の採用戦略を見直す必要があるかもしれません。

定期的な見直しを行うことで、常に最新の市場動向に合わせた採用活動を行うことができます。

採用担当者だけでなく、関係者全員で共有する

採用ペルソナは、採用担当者だけでなく、経営層や現場の社員など、採用に関わる全ての人と共有することが重要です。

ペルソナを共有することで、

  • 採用基準の統一:全員が同じ認識を持って採用活動を進めることができます。
  • 情報発信の一貫性:求人広告や面接での質問など、一貫したメッセージを発信することができます。
  • 協力体制の構築:採用担当者だけでなく、社員全員が採用活動に積極的に関わるようになります。

採用ペルソナを共有し、共通認識を持つことで、より効果的な採用活動を実現することができます。

採用ペルソナに関するよくある質問

採用ペルソナについてよくある質問とその回答をまとめました。

Q1:採用ペルソナを作成するメリットは?

A:採用ペルソナを作成するメリットは多岐にわたります。

  • 採用活動の効率化
    ターゲット層を明確にすることで、効果的な採用戦略を立てることができ、採用活動にかかる時間やコストを削減できます。
  • マッチング精度の向上
    自社に合った人材像を明確にすることで、ミスマッチを減らし、入社後の定着率向上に繋がります。
  • 採用プロセスの最適化
    ペルソナに合わせた情報発信や選考方法を設計することで、スムーズな採用プロセスを実現できます。
  • 採用ブランディングの強化
    ペルソナに響くメッセージを発信することで、企業の魅力を効果的に伝え、優秀な人材からの応募を増やせます。

Q2:採用ペルソナを作成する際にどのような情報を収集する必要があるか?

A:採用ペルソナ作成に必要な情報は、大きく分けて2つあります。

  • デモグラフィックデータ
    年齢、性別、居住地、最終学歴、職務経験、スキル、年収など、客観的な属性情報
  • サイコグラフィックデータ
    価値観、興味・関心、ライフスタイル、情報収集方法、キャリア目標など、内面的な情報

これらの情報を、社員インタビュー、アンケート調査、人事評価データ、Webサイトのアクセス解析、SNS分析など、様々な方法で収集・分析することが重要です。

Q3:採用ペルソナはどのように採用活動に活かせるか?

A:採用ペルソナは、採用活動の様々な場面で活用できます。

  • 求人広告の作成
    ペルソナに響くメッセージやキーワードを盛り込み、ターゲット層の目に留まりやすい広告を作成する
  • 媒体選定
    ペルソナが利用する求人媒体(例:Webサイト、SNS、転職エージェント)を特定し、効率的に情報を発信する
  • 面接
    ペルソナのスキルや経験に合わせた質問を用意し、候補者の適性を的確に見極める
  • 内定者フォロー
    ペルソナのニーズに合わせた情報提供やコミュニケーションを行い、入社後のミスマッチを防ぐ

Q4:採用ペルソナを作成するのにどれくらいの時間がかかるか?

A:採用ペルソナ作成にかかる時間は、企業規模や求職者数、情報収集の方法などによって異なりますが、一般的には数週間から1ヶ月程度が目安となります。

ただし、初めて採用ペルソナを作成する場合や、詳細なペルソナを作成する場合には、さらに時間がかかることもあります。

Q5:採用ペルソナを定期的に更新する必要はあるか?

A:はい、あります。採用市場や自社の事業環境は常に変化しているため、採用ペルソナも定期的に見直す必要があります。

一般的には、年に一度、または大きな組織改革や事業戦略の変更があった際には、ペルソナの見直しを行うことが推奨されます。

まとめ

この記事では、採用ミスマッチを防ぎ、自社に最適な人材を採用するためのツールである「採用ペルソナ」について解説しました。

採用ペルソナは、単なるターゲット層の分析にとどまらず、具体的な人物像を描き出すことで、採用活動全体を効率化し、効果的な戦略立案を可能にします。

採用ペルソナを作成する際には、

  • 採用目的の明確化
  • 既存社員の傾向分析
  • 採用市場の調査

といった事前準備をしっかりと行い、具体的なペルソナ像を設定することが重要です。

また、ペルソナ作成後も、定期的な見直しや関係者全員での共有を心掛けることで、ペルソナを最大限に活用することができます。

採用ミスマッチによる早期離職や採用コストの増加にお悩みの企業様は、ぜひこの記事を参考に、採用ペルソナの作成・活用に取り組んでみてください。