Google アナリティクス4(GA4)は、2024年7月1日にユニバーサルアナリティクス(UA)のサポートが終了したことに伴い、多くの企業で導入が進んでいます。
しかし、GA4にはデータ分析の精度を上げるための重要な初期設定がいくつかあります。これらの設定を見落とすと、コンバージョン率が正しく計測されなかったり、ユーザーの行動分析が不十分になったりする可能性があります。
私たちがご支援・ご相談させていただいている企業様のGA4アカウントを拝見すると、推奨される初期設定の見落としが非常に多く見受けられます。
そこでこの記事では、GA4導入・移行後に見落としがちな7つの推奨設定とその具体的な設定方法について詳しく解説します。
この機会に改めて設定を見直すことで、データ分析の精度が向上し、Webサイトのリニューアルやマーケティング戦略をより効果的に進めることができるはずです。
GA4の基本について学び直したい方は、「Googleアナリティクス4(GA4)の特徴と押さえておきたい基礎知識」もあわせてご覧ください。
GA4初期設定で見落としがちな7つのポイント
ここでは、GA4導入後に見落としがちな7つのポイントを順番に解説していきます。
以下の7つのポイントがGA4で正しく設定されているか、ぜひ確認してみてください。
- データ保持期間を「14か月」に設定する
- 社内からのアクセスを除外する(内部トラフィック)
- 複数Webサイトがある場合は、クロスドメイン計測の設定をする
- Webサイトの成果を測るために、キーイベントを設定する
- Googleシグナルでユーザーの行動・属性を収集する
- ユーザーの行動をイベントとして計測する
- ECサイトではeコマースを設定する
1. データ保持期間を「14か月」に設定しよう
GA4では、集めたデータをどれくらいの期間残しておくか(データ保持期間)を設定できます。
データ保持期間は「2か月」もしくは「14か月」を選ぶことができますが、初期設定では「2か月」なので、変更しないと2か月以上経過したデータは自動的に消えてしまいます。
つまり、3か月前にやったキャンペーンの効果を調べようと思っても、データが残っていないので調べることができません。 また、去年の同じ時期と比べてどうだったか、季節によって変化はあるか、といったことも分からなくなってしまいます。
これらのデータは、今後のWebサイトの改善や、施策の効果検証にとても大切です。 GA4を導入したら、忘れずにデータ保持期間を「14か月」に設定しましょう!
データ保持期間を「14か月」に変更する方法
データ保持期間の変更方法は以下の通りです。
1.GA4の管理画面にログインし、左下の歯車アイコン「管理」をクリックします。
2.設定したいプロパティを選択し、「データの収集と修正」→「データ保持」と進みます。
3.「イベントデータの保持」を「14か月」に変更。「保存」をクリックし、設定は完了です。
2. 社内からのアクセスは除外しよう(内部トラフィック)
GA4でWebサイトのデータを見るとき、社内の人やテストでアクセスしたデータは除外しておきましょう。
なぜなら、これらのデータを含めてしまうと、
- 本当のユーザー数やアクセス数が分からなくなる
- コンバージョン率などの数字がおかしくなる
- 大事なデータが見えにくくなる
といった問題が起きてしまうからです。
そのため、社内のIPアドレスなどから頻繁にアクセスする場合は、内部トラフィックの除外設定を行っておくと、分析の精度が高まります。
以下に内部トラフィックを除外する方法を解説していきます。
内部トラフィックを除外する方法
ここでは、GA4で内部トラフィックを除外する方法をステップバイステップで解説します。
1. GA4の管理画面にアクセス
GA4の管理画面にログインし、左下の歯車アイコン「管理」をクリックします。
2. データストリームを選択
設定したいプロパティの「データストリーム」を選択します。
3. 対象のデータストリームを選択
該当のデータストリームを選択してください。
データストリームとは、ウェブサイトやアプリのデータを収集するための設定のことです。
4. 内部トラフィックの定義
「タグ設定を行う」から「内部トラフィックの定義」を選択します。
ここで、社内からのアクセスを識別するためのルールを設定します。
5. 内部トラフィック ルールの編集
「内部トラフィック ルールの編集」で、ルール名(任意の名前でOKです)、traffic_typeの値、除外したいIPアドレスを入力します。
社内からのアクセスを除外するには、IPアドレスを使います。IPアドレスとは、インターネット上の住所のようなものです。
自社のIPアドレスが分からない場合は、「What Is My Ip Adress」というサイトで調べることができます。
6. データフィルタの作成
次に、「データ収集と修正」から「データフィルタ」を選択し、新しいフィルタを作成します。データフィルタは、収集したデータを加工するための機能です。
7. フィルタの詳細設定
フィルタの詳細設定では、データフィルタ名(任意の名前でOKです)、フィルタ オペレーション(「除外」を選択します)を入力します。
パラメータ値には、先ほど「内部トラフィックの定義」で設定した「traffic_typeの値」を入力します。
今回は「internal」ですね。
8. フィルタの有効化
最後に、フィルタの状態を「有効」にすれば設定完了です。
設定が正しく反映されているか確認するには、リアルタイムレポートで確認する方法があります。
社内ネットワークからウェブサイトにアクセスし、リアルタイムレポートにアクセス数が表示されないことを確認しましょう。
フィルタの状態は3種類が存在する
フィルタの状態には、「テスト」「有効」「無効」の3種類があります。それぞれの状態について詳しく見ていきましょう。
テスト
- フィルタを実際に適用する前にテストするための状態です。
- 本番環境のデータは変更されませんが、「テストデータフィルタ名」というディメンションを使って、フィルタされたデータを確認できます。
例えば、新しいフィルタを作成した際に、意図した通りにデータが除外されるか確認するために使用します。
有効
- フィルタを実際に適用して有効にした状態です。
- アナリティクスデータに永続的な変更が加えられます。
- 指定した条件に合うデータは、完全に除外されます。
- 一度除外したデータは元に戻せないので、有効にする前に必ずテストを行いましょう。
無効
- フィルタを無効にした状態です。
- フィルタは評価されず、データにも影響を与えません。
- 以前有効だったフィルタを一時的に停止したい場合などに使います。
例えば、特定のキャンペーン期間中のみデータをフィルタリングしたい場合、キャンペーン終了後にフィルタを無効にすることができます。
参考:アナリティクス ヘルプ - [GA4] 内部トラフィックの除外
3. Webサイトが複数ある場合は、クロスドメイン計測の設定をしよう
例えば、会社のホームページとオンラインショップのように、複数のWebサイトを持っているケースを考えてみましょう。
GA4は初期設定では、これらのWebサイトを別々に認識してしまいます。
この場合、あるユーザーがホームページを見た後にオンラインショップで買い物をしたとしても、GA4では2人の別々のユーザーがアクセスしたと認識されてしまいます。
その結果、ホームページからオンラインショップへの流入経路が分からなくなったり、ユーザーがどちらのWebサイトを頻繁に利用しているのかを把握できなくなったりする可能性があります。
つまり、Webサイト全体のユーザー行動を正しく理解できず、効果的な改善やマーケティング戦略につなげることが難しくなってしまうのです。
クロスドメイン計測を設定すると、2つのWebサイトを行き来した行動を、1人の人の行動としてまとめて記録できます。
クロスドメイン計測の設定方法
クロスドメイン計測の設定は、以下の通りです。
1. GA4の管理画面から「管理」を選択します。
2. 「データストリーム」を選択し、対象のウェブデータストリームをクリックします。
3. 「タグ設定を行う」をクリックし、「ドメインの設定」を選択します。
4. 「条件を追加」をクリックし、以下の情報を入力します。
- マッチタイプ:完全一致または部分一致を選択
- ドメイン:クロスドメイン計測したいドメインを入力
5. 「保存」をクリックして設定は完了です。
この設定により、指定したドメイン間でユーザーの行動を一貫して追跡できるようになります。
参考:アナリティクス ヘルプ - [GA4] クロスドメイン測定のセットアップ
4. Webサイトの成果を測るために、キーイベントを設定しよう
Webサイトやアプリには、それぞれ目標があります。
例えば、お店のWebサイトなら「商品を買ってもらうこと」、情報サイトなら「会員登録してもらうこと」などが目標になります。
GA4では、この目標達成のことを「キーイベント」と呼びます。キーイベントを設定すると、目標がどれくらい達成されているかを記録することができます
ちなみに、以前は「コンバージョン」と呼ばれていましたが、2024年3月に「キーイベント」に名称が変更されました。
GA4のキーイベントの設定方法は、「GA4のコンバージョン設定をスクショ付きで解説 | サンクスページ、ボタンクリック、ECサイト購入の計測」という記事で詳しく解説しています。
キーイベントは設定するだけでなく、目標達成までの道のりを細かく見ていくことも大切です。
例えば、お店のWebサイトなら、
- 商品ページを見る
- カートに入れる
- 購入手続きを始める
- 購入完了
というステップがありますよね。
GA4の探索レポート機能を使うことで、これらのステップをそれぞれイベントとして設定し、各ステップでどれくらいの人が次のステップに進んでいるか(コンバージョン率)を分析することができます。
どこで人が離脱しているのか、改善すべきポイントはどこか、といったことなど、改善すべきポイントが見えてきます。
関連記事:GA4探索レポートの使い方 |作成方法とテンプレを解説
5. Googleシグナルでユーザーの行動、属性データを収集しよう
Googleシグナルは、Googleアカウントにログインしている人が、スマホやパソコンなど複数のデバイスを使って、どんな行動をしているかを分析できる機能です。
例えば、ある人がスマホで商品を調べて、後でパソコンでその商品を買った場合、Googleシグナルを使えば、それが同一人物の行動だと分かります。
Googleシグナルを使うと、
- ユーザーの行動や属性(年齢、性別、興味関心など)データを収集することができます。
- 広告を、より興味を持ちそうな人に向けて表示できます。
- 以前Webサイトを訪れた人に、再びアプローチする広告(リマーケティング広告)を、より効率的に配信できます。
Googleシグナルの設定手順
Googleシグナルの有効化は、以下の手順で行います。
1. GA4の管理画面から「管理」をクリックします。
2. 「データの収集と修正」から「Googleシグナルを有効にする」をオンにして、設定は完了です。
注意点
- Googleシグナルは、ユーザーが許可した場合のみデータを集めます。
- プライバシーポリシーに、Googleシグナルを使うことを明記する必要があります。
- Googleシグナルのデータは、個人が特定できないように匿名化されています。
これらの点に注意して、Googleシグナルを有効化しましょう。
参考:アナリティクス ヘルプ - [GA4] Google アナリティクス 4 プロパティで Google シグナルを有効化する
6. ユーザーの行動をイベントとして計測しよう
GA4では、ページビュー、スクロール、クリックなどの基本的なイベントは標準イベントとして自動的に計測されます。
ただし、より詳細な分析を行うためには、カスタムイベントを設定する必要があります。
自社サイトで計測すべきイベントは、Webサイトの目的や特性によって異なります。
以下に、ECサイトとメディアサイトを例に、計測すべきイベントとその目的をまとめました。
サイトの種類 | 計測すべきイベント | 目的 |
ECサイト | 商品詳細ページの閲覧 | ユーザーの興味関心のある商品を把握する |
カートへの追加 | 購入に至るまでの離脱ポイントを特定する | |
購入完了 | コンバージョン率を計測し、売上向上施策に繋げる | |
メディアサイト | 記事の読了 | コンテンツの質や読者の関心を評価する |
動画の再生 | 動画コンテンツの視聴状況を把握する | |
コメントの投稿 | ユーザーエンゲージメントを測り、コミュニティ形成に役立てる |
その他の計測可能なイベント例
- お問い合わせフォームの送信:見込み顧客獲得の状況を把握する
- 資料ダウンロード:コンテンツのダウンロード数やリード獲得状況を把握する
- 会員登録:会員獲得数や会員の行動を分析する
- ページスクロール深度:コンテンツのどの部分が読まれているかを把握する
- サイト内検索:ユーザーがどのような情報を求めているかを把握する
自社のWebサイトの目的に合わせて、適切なイベントを設定し、分析することで、より効果的なWebマーケティング戦略を展開することができます。
GA4のイベント設定は、「Googleアナリティクス4(GA4)のイベントの基本から設定方法まで徹底解説」という記事で詳しくご紹介しています。
こちらも合わせてご覧ください!
7. ECサイトではeコマースを設定しよう
オンラインショップ(ECサイト)を運営している方は、GA4のeコマース設定をすることで、売上の分析や改善に役立つ詳細なデータを取得できます。
eコマース設定を行うメリット
eコマース設定を行うと以下のような情報を収集することができます。
- どのような商品が売れているのか
- どのページで商品が購入されているのか
- どれくらいの収益があるのか
- どんな人が商品を買っているのか
さらに、これらの情報を分析することで、
- 人気商品を把握し、在庫管理やプロモーションに役立てる
- 売上が低い商品を見つけ出し、改善策を考える
- 購入されやすいページのデザインを参考に、他のページも改善する
- どんな人に商品が売れているかを知り、ターゲットを絞った広告を出す
といったことができます。
Googleタグマネージャー(GTM)で設定する方法
Google Tag Manager(GTM)は、Webサイトに設置するタグを一元管理できるツールです。
GTMを利用することで、ECサイトのシステムに詳しくない方でも、比較的簡単にeコマース設定を行うことができます。
GTMでeコマース設定を行うには、以下の手順で行います。
- GTMアカウントを作成し、WebサイトにGTMタグを設置します。(関連記事:【徹底解説】ホームページにタグを設置する2つの方法)
- GTMで「トリガー」を作成します。「トリガー」は、特定のページが表示された時やボタンがクリックされた時などに、タグを実行する条件を定義します。
例えば、購入完了ページが表示された時にeコマースタグを実行するトリガーを作成します。 - GTMで「変数」を作成します。「変数」は、商品名や価格などの情報を取得するためのものです。例えば、商品詳細ページから商品名を取得する変数を作成します。
- GTMで「タグ」を作成します。「タグ」は、GA4にデータを送信するためのものです。eコマース用のタグを選択し、トリガーや変数を設定します。
設定する際の注意点
- eコマース設定は、ECサイトのシステムによって設定方法が異なる場合があります。
- 詳しい設定方法は、GA4のヘルプやECサイトのシステムのマニュアルなどを確認しましょう。
- 設定が完了したら、テスト購入などを行い、データが正しく計測されているか確認しましょう。
eコマース設定は少し難しいかもしれませんが、設定することで得られる情報は非常に価値があります。
設定にお悩みの方は、お気軽に弊社(株式会社アクシス)までご相談ください。
GA4の設定についてよくある質問
Q1:設定変更はいつ行うのが良いですか?
A:GA4の設定変更は、できるだけ早く行うことを強くおすすめします。
設定変更前に収集されたデータは、変更後の設定には反映されません。例えば、コンバージョンイベントの設定を後回しにしてしまうと、その間のコンバージョンデータが取得できず、貴重なデータが失われてしまいます。
また、データ保持期間の設定も同様です。デフォルトの2か月から14か月に変更した場合、変更前に収集された2か月より古いデータは復元できません。
GA4を導入・移行したら、すぐにでも設定を見直し、データ収集・分析を最適化しましょう。
Q2:設定変更によるデータへの影響はありますか?
A:設定変更の内容によって、データへの影響は異なります。
- データ保持期間の設定変更: 過去のデータには影響しません。変更後のデータから、新しい保持期間が適用されます。
- その他の設定変更(イベント計測、コンバージョン設定など): 変更後のデータにのみ反映されます。過去のデータは、変更前の設定に基づいて収集・処理されています。
Q3:自分で設定するのが難しい場合はどうすれば良いですか?
A:GA4の設定は、専門的な知識が必要な場合もあります。もし自分で設定するのが難しい場合は、GA4の導入・運用支援サービスを提供している専門の代理店やコンサルタントに依頼することも可能です。
弊社でも、GA4の導入・設定支援サービスを提供しております。お気軽にご相談ください。
まとめ:GA4初期設定を見直し、データ分析を最大化しよう
今回は、GA4導入・移行後に見落としがちな7つの推奨設定について解説しました。
これらの設定は、一見些細なように思えるかもしれませんが、データ分析の精度やWebサイト改善の効果を大きく左右する重要な要素です。
「とりあえず計測はできているから大丈夫」と安心してはいけません。
今一度、ご自身のGA4アカウントの設定を見直し、今回ご紹介したポイントが適切に設定されているか確認してみてください。