応募者を引きつける製造業の採用サイトとは?役割とコンテンツの事例を紹介

応募者を引きつける製造業の採用サイトとは?具体的なポイントを解説

製造業では深刻な人手不足が続いており、優秀な人材の確保が急務となっています。

少子高齢化による労働人口の減少に加え、製造業の「3K(きつい、汚い、危険)」というネガティブなイメージから、若年層の製造業離れが進んでいるのが現状です。

こうした中、いかに応募者の興味を引き、自社への応募につなげるかが重要になります。

その鍵を握るのが、採用サイトの内容や構成です。求職者に刺さる、魅力的な採用サイトを作ることが採用成功のカギといえるでしょう。

本記事では、応募者を引きつける製造業の採用サイトの具体的なポイントを解説します。製造業の仕事のやりがいをアピールする方法や、求職者が知りたい情報の盛り込み方など、効果的な採用サイト作りのコツが満載です。

採用に悩む製造業の採用担当者の方は、この記事を読んで自社の採用活動にお役立てください。

また、採用マーケティングの戦略の基本について興味がある方は「採用マーケティングとは?重要性や進め方について解説」という記事も合わせてご覧ください。

目次

製造業における採用市場の動向

製造業の採用を考える前に、まずは採用市場の現状を把握することが大切です。

ここでは、製造業に焦点に当てた採用市場の動向について解説します。

企業間の採用競争が激しい

求職者1人に対して、企業からの求人が1.71件もある製造業。

厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和6年3月分及び令和5年度分)について」によると、2024年3月時点の製造業(生産工程従事者)の有効求人倍率は1.71倍。これは全職種の平均である1.22倍を大きく上回っています。

つまり、製造業では1人の求職者に対して複数の企業が採用を競い合っている状態です。優秀な人材の獲得はますます困難になり、企業間の採用競争は激化の一途をたどっています。

カテゴリ 新規求人倍率 有効求人倍率
職業計 2.01 1.22
管理的職業従事者 2.18 1.13
専門的・技術的職業従事者 3.21 1.95
事務従事者 0.81 0.44
販売従事者 3.41 2.18
サービス職業従事者 3.79 2.60
保安職業従事者 8.59 6.74
農林漁業従事者 1.86 1.17
生産工程従事者 2.60 1.71
輸送・機械運転従事者 3.12 2.30
建設・採掘従事者 7.88 5.60
運搬・清掃・包装等従事者 1.34 0.69

※常用:パート除、厚生労働省「一般職業紹介状況(令和6年3月分及び令和5年度分)について」より

 

有効求人倍率は、求職者1人に対する求人数の割合を示す指標。1倍を超えると求人が求職者を上回り、企業側の採用難易度が高まることを意味します。

製造業における人材不足は深刻化しており、企業は採用戦略の見直しを迫られています。

就業者の高齢化と若年層の減少が課題

厚生労働省の「2022年版 ものづくり白書」によると、製造業の就業者数は過去20年間で157万人減少しています。

製造業就業者の推移

参考:厚生労働省「2022年版 ものづくり白書 (令和3年度 ものづくり基盤技術の振興施策)

 

また、34歳以下の若年就業者と65歳以上の高齢就業者の推移を見ると、若手人材の減少と高齢化が顕著です。

特に34歳以下の若手人材は121万人も減少しており、深刻な人材不足に陥っています。

一方で、65歳以上の就業者は1.5倍に増加しており、製造業の高齢化が加速しています。

若年層の割合は2012年以降ほぼ横ばいである一方、高齢者の割合は2017年から横ばいとなっており、若返りの兆しは見られません。

 

若年就業者の推移および高齢就業者の推移 (1)

参考:厚生労働省「2022年版 ものづくり白書 (令和3年度 ものづくり基盤技術の振興施策)

 

このような傾向は製造業のみならず、全産業で見られますが、特に製造業では、長年培ってきた技術やノウハウを次世代に継承していくためにも、若手人材の確保が急務の課題となっています。

原材料高騰もたらす採用への影響

エネルギー価格の高騰や円安の影響で、原材料価格の高騰が続いています。

この影響は製造業の人材不足に拍車をかけ、多くの企業が厳しい経営環境に直面しています。

採用を控える企業が増えている

原材料費や光熱費などの高騰により、多くの企業で収益が圧迫されています。コスト増加分を販売価格に転嫁できない企業も多く、採用コストの抑制を余儀なくされています。

製造業では2023年に入り新規求人数が前年比で2桁減少が続き、2024年度の正社員採用予定企業の割合も3年ぶりに低下しました。

深刻な人手不足にも関わらず、採用を控える企業が増えているのが現状です。

正社員の雇用動向

参考:株式会社帝国データバンク「2024年度の雇用動向に関する埼玉県企業の意識調査

賃上げにも影響

原材料高騰により利益が減少する中、賃上げ原資の確保が難しくなっています。

特に中小企業では、大企業との賃金格差から優秀な人材の確保が一層困難になることが懸念されます。人件費の上昇分を価格転嫁できていない企業は約半数に上り、賃上げと採用のジレンマに直面しています。

採用条件の見直し

コスト増加に対応するため、一部の企業では採用条件の引き下げや非正規雇用へのシフトが進んでいます。新卒採用を抑制し、即戦力となる中途採用にシフトする動きもみられます。

また、女性や高齢者など多様な人材の活用や、省人化投資による生産性向上にも取り組む企業が増えています。

原材料高騰が長期化する中、企業は採用コストと必要な人材の確保のバランスを取りながら、事業の継続・成長を図る難しい舵取りを迫られています。

このような状況下において、企業が生き残るためには、採用活動を戦略的に行い、効率化を図ることが重要です。

つまり、「採用を仕組み化」することが求められています。

 

参考文献:

企業の採用サイトが重要な理由

企業の採用サイトは、優秀な人材の獲得と定着に欠かせない重要なツールです。

その理由は以下の3点に集約されます。

就活生の約70%が採用サイトを読み込んでいる

株式会社キャリタスが実施した調査によると、約70%の就活生が採用サイトに「かなり目を通した」と回答しています。これは、企業サイトの閲覧度合である約60%を上回る数字であり、採用サイトが企業選びにおいて重要な役割を果たしていることを示しています。

求職者の採用サイトの閲覧度合

参考:株式会社キャリタス「2023年卒 採用ホームページに関する調査

 

多くの企業は、企業サイトには力を入れている一方で、採用サイトや採用ページへの投資が不足している傾向があります。しかし、採用サイトは企業の魅力を伝え、優秀な人材を引きつけるための重要な窓口です。

魅力的な採用情報がなければ、求職者は他の企業に目を向けてしまいます。

自社よりも競合他社の採用情報に魅力を感じてしまえば、そもそも選考の土俵にすら上がってもらえない可能性もあります。

企業の魅力を最大限に伝え、優秀な人材を獲得するためには、企業サイトだけでなく、採用サイトにも力を入れることが不可欠です。

ミスマッチの防止

採用サイトでは、企業文化、仕事内容、社員の声など、求職者が知りたい情報を詳しく伝えることができます。

写真や動画などを活用して、職場の雰囲気や働く社員の様子を具体的にイメージできるようなコンテンツを作成することで、求職者が入社前に企業や仕事内容を具体的に理解することができます。

これにより、入社後の「こんなはずじゃなかった」というミスマッチを防ぎ、早期離職のリスクを低減できます。

採用コストの削減

ミスマッチが減ることで、社員の定着率が向上します。定着率の向上は、採用コストの削減に直結します。

採用活動にかかる費用や、新しい社員の教育にかかるコストを削減できるだけでなく、退職に伴う損失を回避できるため、企業の財務状況の改善にもつながります。

 

製造業の採用サイトで意識したいポイント

1.求職者目線で情報を整理し、わかりやすく伝える

製造業の採用サイトでは、求職者が知りたい情報を的確に提供することが重要です。

具体的な仕事内容やキャリアパス、必要なスキルや資格、職場環境について詳細に説明することで、求職者は入社後の自分をイメージしやすくなります。

また、社員インタビューや実際の作業風景の写真、動画などを活用することで、リアルな職場の雰囲気を伝えることができます。

 

事例① 職種紹介

各職種の具体的な業務内容、やりがい、必要なスキルなどを詳しく解説する。

川崎重工株式会社の職種紹介の事例

参考:川崎重工業株式会社

 

事例② 社員紹介

社員のインタビュー記事や動画を掲載し、働く人の生の声を伝える

日本ガイシ株式会社の社員紹介の事例

参考:日本ガイシ株式会社

2.ユーザーフレンドリーなデザインで応募を促進する

採用サイトのデザインは、応募者に対する第一印象を決定づける重要な要素です。

以下の点を意識したサイト設計になっているか確認しましょう。

ナビゲーションの最適化

シンプルで直感的なナビゲーションメニューを用意し、応募者が必要な情報に素早くアクセスできるようにしましょう。

主要な情報(募集要項、企業情報、応募フォームなど)へのリンクは、目立つ位置に配置することが重要です。

採用サイトのナビゲーションの一例
ナビゲーション項目 ページで伝える内容

トップページ

企業の理念やビジョン、採用活動全体のメッセージを伝える。

企業情報

会社概要、沿革、事業内容、経営理念、強みなどを紹介。

募集要項

募集職種、仕事内容、応募資格、給与、勤務地、福利厚生などの情報を掲載。

社員紹介

社員のインタビューや1日の仕事の流れなどを紹介し、職場の雰囲気や働く社員の人柄を伝える。

研修制度・キャリアパス

入社後のキャリアプランやスキルアップの機会を紹介。

福利厚生

社員寮や住宅補助、育児・介護支援制度など、福利厚生に関する情報を詳しく紹介。

よくある質問

応募や選考に関する疑問に答えるFAQページ。

イベント情報

会社説明会やインターンシップなどの情報を掲載。

応募フォーム

応募に必要な情報を入力するフォーム。

レスポンシブデザインの採用

次に、レスポンシブデザインの重要性についてです。レスポンシブデザインとは、パソコン、スマートフォン、タブレットなど、様々な画面サイズに合わせて、自動的にレイアウトが最適化されるデザインのことです。

これにより、どのデバイスからアクセスしても、見やすく使いやすいサイトを提供できます。求職者の多くはスマートフォンで情報収集を行うため、レスポンシブデザインは必須と言えるでしょう。

見やすいレイアウトと配色

採用サイトのデザインは、ただ美しいだけでなく、情報が伝わりやすいレイアウトと配色であることが重要です。

レイアウトのポイント

  • 余白を効果的に活用する:情報を詰め込みすぎず、余白を十分に取ることで、読みやすさが向上します。
  • 重要な情報を目立たせる:キャッチコピーや募集要項など、重要な情報は目立つように配置しましょう。太字や色、フォントサイズなどを工夫して、視線を集めるようにします。
  • コンテンツを整理する:情報をカテゴリーごとに分け、見出しや箇条書きを活用して整理することで、求職者が知りたい情報にスムーズにたどり着けるようにします。

 

配色のポイント

  • コーポレートカラーを活用する:企業のブランドイメージを伝えるために、コーポレートカラーを基調とした配色にすると、統一感のあるサイトになります。
  • コントラストを意識する:背景色と文字色のコントラストを明確にすることで、文字が読みやすくなります。
  • ターゲット層に合わせた配色を選ぶ:若年層向けには明るい色、ミドル層向けには落ち着いた色など、ターゲット層に合わせた配色を選ぶことで、より効果的にアピールできます。

3.製造業ならではのコンテンツで、企業の魅力を最大限にアピール

製造業の採用サイトでは、業界特有の魅力を伝えるコンテンツを充実させることが重要です。

求職者の興味を引き、入社意欲を高めるための具体的なコンテンツ例をご紹介します。

製品や技術の紹介

①自社製品や紹介動画

自社の製品やサービスを詳しく紹介し、その魅力や社会への貢献をアピールします。

自社製品や紹介動画_事例

参考:株式会社エドランド工業

②技術やプロジェクトに関する記事や動画

専門的な技術、ノウハウ、プロジェクトの取り組みを分かりやすく解説し、技術力の高さをアピールします。

技術やプロジェクトに関する記事や動画_事例

参考:株式会社ブリヂストン

③開発ストーリーや事例紹介

製品開発の背景や苦労、成功事例などを紹介することで、企業の技術力や開発への情熱を伝えます。

製造業_事例参考:日本精工株式会社

工場見学やインターンシップ情報

①工場見学の案内

実際の職場環境や製造工程を見学できる機会を提供することで、求職者の不安を解消し、入社意欲を高めます。

製造業_工場見学

参考:岡安ゴム株式会社

②インターンシップ情報

就業体験を通じて、企業文化や仕事内容を深く理解してもらう機会を提供します。

製造業_インターン

参考: 三菱電機株式会社

③体験談やレポート

工場見学やインターンシップに参加した学生の体験談やレポートを掲載することで、よりリアルな情報を伝えることができます。

製造業_感想

参考:株式会社ニコン

社員寮や福利厚生など、働く環境を明確に提示する

①社員寮や住宅補助

地方からの求職者にとって、住居に関する情報は非常に重要です。社員寮の有無や家賃補助制度などを詳しく紹介しましょう。

製造業_住宅手当

参考:株式会社ディスコ

②その他福利厚生

製造業ならではの福利厚生(例:作業着の貸与、食堂の有無、資格取得支援制度など)を詳しく紹介することで、求職者の安心感につながります。

製造業_福利厚生

参考:手島精管株式会社

まとめ|採用サイトは「攻め」の採用ツール

製造業における人材不足は深刻さを増していますが、魅力的な採用サイトは、企業のブランドイメージ向上、優秀な人材の獲得、そして定着率の向上に大きく貢献します。

求職者目線に立った情報設計、ユーザーフレンドリーなデザイン、そして製造業ならではのコンテンツを充実させることで、他の企業との差別化を図り、採用競争を勝ち抜くことができるでしょう。

採用サイトは、単なる情報発信の場ではなく、「攻め」の採用ツールとして活用できるのです。今回の記事でご紹介したポイントを参考に、ぜひ自社の採用サイトを見直し、改善に取り組んでみてください。

もし、採用サイトの改善にお悩みでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。

採用マーケティングの専門家が貴社に最適な採用戦略をご提案いたします。