突然ですが、新規案件のデジタルマーケティングを成功させるには、まず何から始めるべきでしょうか?
事業分析のフレームワークとして有名な3C分析がありますね。
クライアントの事業内容、エンドユーザー、競合を調べることから始める方が多いと思います。しかし、これらの分析対象の中で最も重要なのは「顧客理解」だと私は考えています。
なぜなら、デジタル化が進んだ現代では、企業が顧客を選ぶ力よりも、顧客が企業を選び育てる力の方が強いからです。優れたサービスであれば、顧客は自発的に情報を共有してくれるため、企業がお金だけで顧客をコントロールできる時代ではなくなりました。
さらに、この「顧客理解」を進めるためには、クライアントの事業モデルを徹底的に理解することが不可欠です。そこで今回は、クライアントの事業を理解するための方法とコツを紹介します。
特に、営業経験のないマーケターの方や、アナログ媒体でのマーケティング活動経験がない方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
クライアントの事業を理解する5つのコツ
1. クライアントのWebサイトを隅々までチェックする
クライアントのWebサイトは、まるで会社の顔。隅々までチェックすることで、たくさんのヒントが見つかります。
まず注目したいのは、事業内容(サービス)、沿革、代表メッセージといった基本情報。
これらを見ることで、どんな事業を行っているのか、どんな歴史を歩んできたのか、そしてどんな未来を目指しているのか、といった会社の全体像が見えてきます。
Webサイトのデザインやコンテンツも重要な情報源です。
お金のかけ方やアニメーションの使い方、ブログの更新頻度などから、会社の雰囲気や文化を感じ取ることができます。
例えば、やたらとアニメーションが多いと「ちょっと派手好きなのかな?」と思ったり、ブログの更新が止まっていると「Webにはあまり力を入れていないのかも?」と想像したり。
さらに、ソーシャルメディアもチェックし、公式アカウントはもちろん、社員のアカウントも見てみましょう。どんな情報を発信しているのか、どんな頻度で更新しているのかを知ることで、会社のコミュニケーションスタイルや力を入れていることが分かります。
2. クライアント企業のスタッフと直接対話する
クライアントの事業を深く理解するには、やっぱり直接話を聞くのが一番です。
最初はマーケティング担当や営業担当の方と話すことが多いと思いますが、それぞれの担当者がサービスについてどう思っているのか聞いてみると、会社の視点で事業を理解できます。
そこから、面白い施策のアイデアがポンポン出てくることも多いんですよ。
それと同時に、過去にどんなプロモーションをやって、どんな結果だったのかも聞いてみましょう。成功も失敗も、次の施策を考える上で貴重なヒントになります。
施策の進め方や管理の状況を聞けば、会社の雰囲気や仕事の進め方もなんとなく見えてきますよね。
もし可能なら、現場で働いているスタッフの方にも話を聞いてみてください。
現場ならではの視点で、事業やエンドユーザーについて教えてもらえるはずです。
ちょっと泥臭い感じがするかもしれませんが、生の声を聞くことで、思わぬ発見があるかもしれませんよ。
3. クライアントの商品・サービスを実際に体験する
百聞は一見に如かず、という言葉があるように、クライアントの事業を本当に理解するには、自分の身銭を切って、商品やサービスを実際に体験してみることが大切です。
ユーザーの気持ちになってサービスを利用することで、「ここが良かった!」「ここはもっとこうだったらいいのに」といったリアルな感想が生まれます。
これこそが、マーケティングにおいて非常に重要であり、自分自身がユーザーになることで、たくさんの改善点や新しいアイデアが見つかるはずです。
もちろん、住宅販売やBtoBの大型設備など、個人ではなかなか体験できないサービスもありますよね。
そんな時は、展示会に行ってみたり、導入事例を見学させてもらったりするのもおすすめです。
4. クライアントの営業担当者の話を聞く
営業担当者は、いわば会社の最前線でエンドユーザーの声を誰よりもたくさん聞いている存在です。
どんなトークがお客様に響くのか、どんな悩みを抱えているのか、どんな質問が多いのか…営業担当者の経験談には、マーケティングのヒントが詰まっています。
「このトークで契約が決まった!」「こんなトラブルで困った…」といった成功談や失敗談を聞くことで、お客様の心理や行動パターンが見えてきます。
営業担当者の話を聞くことは、エンドユーザーを理解するための近道。マーケティング戦略に活かせる情報がたくさん得られるはずです。
5. エンドユーザーに直接話を聞く
最後は、最も重要なエンドユーザーの声を直接聞くこと。これが、顧客の本当の悩みやニーズを知るための唯一の方法です。
- いつ、どんなきっかけでクライアントのサービスを知ったのか?
- なぜこのサービスを選んだのか?
- 他にどんなサービスと比較したのか?
- サービスを利用する上で、どんなことを考えたのか?
- 実際に使ってみて、良かった点、悪かった点は?
これらの質問を通して、エンドユーザーの考え方や行動パターンを理解することができます。
一般的に、5人にヒアリングすれば課題の80%はカバーできると言われています。まずは5人を目標に、エンドユーザーの声を集めてみましょう。
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まとめ
今回の記事では、クライアントの事業を理解するための5つのコツを紹介しました。
デジタルマーケティングで成功するためには、エンドユーザーの目線に立って施策を考えなければいけません。そのためには、まずエンドユーザーを理解し、その前段階としてクライアント企業を深く理解することが大切です。
デジタルマーケターは、ついWeb上の情報だけで調査を終わらせてしまいがちですが、それでは限界があります。
クライアント企業のスタッフと直接話したり、エンドユーザーにヒアリングしたりすることで、より深く理解することができます。さらに、自分自身もお金を払って商品やサービスを体験することで、初めてスタートラインに立てるのです。
「デジタル」マーケティングという言葉に惑わされてはいけません。
エンドユーザーとの接点がデジタル空間にあるだけで、本質的には従来のマーケティングと何も変わりません。
華やかなイメージの裏には、泥臭く足を使って情報を集める地道な努力があることを忘れずに、マーケティングに取り組んでいきましょう。