ディスプレイ広告には、Googleが提供するGoogleディスプレイネットワーク(GDN)と、Yahoo!が提供するYahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)の2種類があります。
どちらも膨大な数のWebサイトやアプリに広告を掲載でき、幅広いユーザー層にアプローチできることが最大の特徴です。
しかし、掲載先が多岐にわたるからこそ、闇雲に広告を配信しても効果は期待できません。
年齢や性別といったユーザー属性や、Webサイトへの訪問履歴など、目的に応じたターゲット設定が不可欠です。ターゲットを絞らずに広告を配信すると、費用対効果が悪化し、コストばかりが膨らんでしまう可能性があります。
そこで今回は、ディスプレイ広告を効果的に活用するための基礎知識と、費用対効果を高めるためのターゲティング方法をご紹介します。無駄なコストを抑えつつ、最大限の成果を上げるための戦略を学んでいきましょう。
ディスプレイ広告の特徴を知っておこう
ディスプレイ広告を理解するには、リスティング広告と比較すると分かりやすいかもしれません。
リスティング広告は、消費者の行動モデル「AISAS」のSearch(検索)段階に対応し、顕在層にアプローチすることでコンバージョン獲得を目指します。
AISASとは、
- Attention(注意): 商品やサービスを認知する段階
- Interest(興味): 商品やサービスに興味を持つ段階
- Search(検索): 商品やサービスについて情報を検索する段階
- Action(行動): 商品を購入したりサービスを利用する段階
- Share(共有): 商品やサービスの感想をSNSなどで共有する段階
...を表しています。
リスティング広告は、主にSearch(検索)段階のユーザーにアプローチし、顕在化したニーズに応えることでコンバージョン獲得を目指します。
一方、ディスプレイ広告は、Attention(注意)やInterest(興味)段階の潜在層にアプローチする広告です。
一方、ディスプレイ広告は、Search(検索)以外の段階、つまり潜在層にアプローチする広告です。インターネット利用時間のうち検索に費やされる時間はわずか10%程度であり、残りの90%はWebサイト閲覧に費やされています。ディスプレイ広告は、この閲覧中のWebサイトに表示されるため、リスティング広告ではリーチできない多くのユーザーに接触できる可能性があります。
ただし、ディスプレイ広告は閲覧中のWebサイトに表示されるため、ユーザーは必ずしも広告に関心を持っているわけではありません。そのため、リスティング広告と比較するとクリック率やコンバージョン率は低くなる傾向があります。
しかし、ディスプレイ広告はターゲットユーザーに繰り返し表示できるため、サイトへの誘導だけでなく、認知度向上や親近感醸成といった効果も期待できます。
ディスプレイ広告の特徴まとめ
- 潜在層へのアプローチが可能
- 幅広いユーザーにリーチできる
- 認知度向上や親近感醸成に効果的
- クリック率やコンバージョン率はリスティング広告より低め
手堅く始めるためのターゲティング方法
ディスプレイ広告のターゲティングは、大きく「ユーザー属性ターゲティング」と「プレースメントターゲティング」の2つに分けられます。
前者は「誰に」広告を配信するかを、後者は「どこに」広告を配信するかを絞り込むための手法です。
ディスプレイ広告は潜在層向けの広告とよく言われますが、実はターゲティング方法次第では顕在層にもアプローチできます。特に、リマーケティングとサーチターゲティングは、顕在層をターゲットにできる効果的な手法です。
サイト訪問履歴に基づくリマーケティング
GDN、YDNどちらでも設定可能なリマーケティングは、過去にサイトを訪れたユーザーに絞って広告を配信する手法です。
一度サイトを訪れたユーザーは、サービスに関心を持つ見込み客と捉えられます。そのため、リマーケティングはディスプレイ広告の中でも特にコンバージョンに繋がりやすい手法と言えるでしょう。
効果的なリマーケティングのポイント
- 訪問履歴の日数で有効期限を分ける
Webサイトの訪問から3日以内、10日以内、30日以内など、有効期限を細かく設定し、訪問日数に応じて配信の強弱を調整します。一般的に、訪問から時間が経つほど購買意欲は低下するため、有効期限が長いリストには入札単価を抑え、配信頻度を減らすなどの工夫が必要です。 - 訪問ページでターゲットを絞り込む
どのページを訪れたユーザーを対象にするかも重要です。例えばECサイトの場合、トップページや商品ページを見たユーザーよりも、商品をカートに入れたまま離脱したユーザー(カゴ落ちユーザー)の方が購買意欲が高いため、優先的にアプローチするべきです。
リマーケティングは、一度サイトを訪れた見込み客に再度アプローチできる効果的な手法です。訪問履歴の日数や訪問ページを細かく分析し、質の高いユーザーリストを作成することで、コンバージョン率を最大化しましょう。
キーワード検索履歴に基づくサーチターゲティング
YDN限定のサーチターゲティングは、特定のキーワード(サーチキーワード)で検索したユーザーに絞って広告を表示する手法です。
例えば、スポーツ用品ECサイトであれば、「ランニングシューズ」というサーチキーワードを設定することで、Yahoo!でランニングシューズを検索したユーザーに広告を配信できます。
サーチターゲティングの特徴
- リスティング広告でクリックしなかったユーザーや、過去の検索履歴から顕在層にアプローチできる
- 検索履歴の有効期間(1日以内~30日間)と検索回数(1回以上~3回以上)を設定可能
- リマーケティングの有効期間別の成果を参考に設定することで、より効率的な配信が可能
ただし、検索履歴の有効期間や検索回数を厳しく設定しすぎると、広告表示の機会が大幅に減ってしまう可能性があります。ターゲット層の規模と広告表示頻度のバランスを考慮しながら、最適な設定を見つけましょう。
ターゲット設定の掛け合わせで精度アップ
上記で紹介したリマーケティングやサーチターゲティングに加えて、性別や年齢などのユーザー属性を掛け合わせることで、ターゲットをさらに絞り込むことができます。
例えば、
- 30代女性で、過去に自社サイトの特定の商品ページを閲覧したユーザー
- 20代男性で、「ランニングシューズ」というキーワードを複数回検索したユーザー
...といった具合に、より具体的なターゲット像を設定できます。
Googleアナリティクスなどで、特定のユーザー属性がコンバージョンに繋がりやすい傾向が見られる場合は、積極的にユーザー属性ターゲティングを活用しましょう。
ディスプレイ広告とCookie廃止の影響
近年、プライバシー保護の観点から、Cookieの利用制限が強化され、将来的には廃止される可能性も示唆されています(関連記事:サードパーティCookie廃止が迫る!Web担当者が知っておくべき対応を解説)。
Cookieは、リマーケティングやサーチターゲティングにおいて重要な役割を果たしてきたため、その廃止はディスプレイ広告に大きな影響を与えることが予想されます。
Cookie廃止がディスプレイ広告に与える影響
- ターゲティング精度の低下
Cookieを利用した詳細なユーザー行動追跡が困難になり、ターゲティング精度が低下する可能性があります。 - リマーケティングの制限
過去の訪問履歴に基づいたリマーケティングが制限され、広告効果が低下する可能性があります。 - コンバージョン計測の難化
Cookieを利用したコンバージョン計測が難しくなり、広告効果の測定が困難になる可能性があります。
Cookie廃止への対策
Cookie廃止の影響を最小限に抑えるためには、以下の対策が考えられます。
- ファーストパーティデータの活用
自社サイトやアプリで収集したデータ(ファーストパーティデータ)を活用し、パーソナライズされた広告配信を行う。 - コンテキストターゲティングの活用
ユーザーの興味関心や閲覧中のコンテンツに合わせた広告配信を行う。 - 新たな広告技術の導入
Cookieに依存しない新たな広告技術(例:Googleのプライバシーサンドボックス)を導入し、プライバシー保護と広告効果の両立を目指す。
Cookie廃止はディスプレイ広告にとって大きな変化ですが、適切な対策を講じることで、その影響を最小限に抑えることができます。ファーストパーティデータの活用や新たな広告技術の導入など、変化に対応するための戦略を積極的に検討していきましょう。
まとめ
ディスプレイ広告は、適切なターゲット設定を行わないと、無駄な費用が発生し、期待した成果を得られない可能性があります。膨大な配信面があるため、最初からターゲットを広げすぎると、予算をオーバーしてしまうリスクも伴います。
そこで、ディスプレイ広告を成功させるためには、以下のポイントを押さえましょう。
- 小さなボリュームから始める - 最初はターゲットを絞り込み、少額の予算でテスト運用を行いましょう。
- 運用状況を確認しながら改善 - クリック率やコンバージョン率などのデータを分析し、ターゲット設定や広告クリエイティブを改善していきましょう。
- 段階的にターゲットを拡大 - 運用のコツを掴み、成果が見えてきたら、徐々にターゲットを拡大していきましょう。
計画的なターゲティングと段階的な拡大によって、ディスプレイ広告の費用対効果を最大化し、ビジネスの成長に繋げることができます。
さらに、Cookie規制への対応も視野に入れ、ファーストパーティデータの活用や新たな広告技術の導入など、変化に対応するための戦略も検討していきましょう。