Googleは、2025年初頭からGoogle ChromeでのサードパーティCookieの段階的廃止を開始すると発表しています。
(参照:Chrome でのサードパーティ Cookie の段階的廃止計画の最新情報)
Webマーケティングや広告運用に携わる方々にとって、この変化は無視できない大きなインパクトをもたらします。
Cookieに頼ってきた従来の戦略は通用しなくなり、新たな対策が急務です。
本記事では、サードパーティCookie廃止の背景や影響、そして企業が取るべき具体的な対策まで、分かりやすく解説します。
Cookieレス時代のWebマーケティングを成功させるためのヒントが満載です。
ぜひ最後までお読みいただき、今後のマーケティング戦略にお役立てください。
そもそもサードパーティCookieとは?
サードパーティCookieとは、ウェブサイトを訪問した時に、あなたのブラウザにこっそり保存される小さなデータファイルのことです。
これを保存するのはウェブサイトの運営者ではなく、広告配信会社やアクセス解析ツールを提供する第三者(サードパーティ)です。
このサードパーティCookieは、私たちの日常生活で利用するネットショッピングやニュースサイト、Web広告など、様々な場面で活用されています。
日常生活での具体的な使用例
ネットショッピング
以前見た商品の広告が他のサイトに表示されたり、おすすめ商品として表示されるのは、サードパーティCookieが使われています。
例えば、あなたが新しいスニーカーを探していて、いくつかの通販サイトを閲覧したとします。
その後、全く別のウェブサイトを見ている時に、さっきのスニーカーの広告が目に飛び込んでくることがあります。
これは、サードパーティCookieによって興味関心が追跡され、それに基づいた広告が表示されていると考えられます。
また、通販サイトで商品をカートに入れたまま放置していた場合、「カートに入れた商品がありますよ!」というリマインダーメールが届くことがあります。
これも、サードパーティCookieが行動を追跡しているからこそできることです。
サードパーティCookieは、好みを学習し、パーソナライズされたショッピング体験を提供するために利用されています。
ニュースサイト
興味を持ちそうなニュース記事が表示されたり、関連記事がおすすめされるのは、サードパーティCookieが使われていると考えられます。
例えば、よく読むニュースサイトでは、興味関心に基づいた記事がトップページに表示されたり、関連記事がおすすめされたりすることがあります。
サードパーティCookieが閲覧履歴を分析し、興味深いと思われる情報を優先的に表示しているのです。
動画サイト
視聴履歴に基づいて、おすすめ動画が表示されたり、関連動画が再生されるのも、サードパーティCookieが使われていると考えられます。
動画サイトで動画を視聴した後、「あなたへのおすすめ」として関連動画が表示されたり、自動的に次の動画が再生されたりすることがあります。
動画サイトにおいても、サードパーティCookieが視聴履歴を分析し、好みに合った動画を推薦しているのです。
Web広告での具体的な使用例
では、Web広告でサードパーティCookieはどのように使用されているのでしょうか?
広告ターゲティング
普段からよく見ているジャンルのウェブサイトや、検索エンジンで入力したキーワードに基づいて、サードパーティCookieはあなたの興味や関心を推測しています。
例えば、あなたがよく美容系のウェブサイトを閲覧している場合、美容関連の商品やサービスの広告が表示される可能性が高くなります。
コンバージョン測定
広告をクリックした後に、実際に商品を購入したり、会員登録したりといったアクションを起こしたかどうかを、サードパーティCookieは追跡しています。
これにより、広告主はどの広告が効果的だったかを分析し、今後の広告戦略に役立てることができます。
例えば、あなたが広告をクリックして商品を購入した場合、その情報はサードパーティCookieによって記録され、広告主はその広告の効果を測定することができます。
リターゲティング広告
過去に訪れたウェブサイトの商品やサービスの広告が、他のウェブサイトを閲覧している時にも表示されることがあります。
これは、リターゲティング広告と呼ばれ、サードパーティCookieによって実現されています。
例えば、あなたが以前ある通販サイトで見た商品の広告が、その後他のニュースサイトやブログなどに表示されることがあります。
あなたがその商品に興味を持っている可能性が高いと判断され、再度購入を促すために広告が表示されているのです。
なぜサードパーティCookieは廃止されるのか?
サードパーティCookieの廃止は、主に次の2つの理由から進められています。
1.プライバシー保護の観点
知らないうちに追跡される
サードパーティCookieは、ユーザーがウェブサイトを訪問するたびに、その行動をひっそりと追跡します。
どのページを見たか、どの商品をクリックしたか、どれくらいの時間滞在したかなど、ユーザーのオンライン上の行動が記録され、個人情報と紐付けられる可能性があります。
プライバシー意識の高まり
近年、個人情報の取り扱いに対する社会全体の意識が高まり、自分の情報がどのように扱われているかを知りたい、コントロールしたいという人が増えています。
サードパーティCookieは、このようなプライバシー意識の高まりに反するものとされています。
実際に企業や個人は、プライバシー保護のために様々な取り組みを行っています。
企業側の取り組み
- Apple
2017年からIntelligent Tracking Prevention (ITP) を導入し、SafariブラウザでサードパーティCookieのトラッキングを制限しています。
(参考:Apple|プライバシー - 機能) - Mozilla
Firefoxブラウザでも、Enhanced Tracking Protection (ETP) を導入し、デフォルトでサードパーティCookieをブロックしています。
(参考:Mozilla|デスクトップ版 Firefox の強化型トラッキング防止) - Microsoft
Edgeブラウザでも、Tracking Prevention機能を導入し、トラッキングを制限しています。
(参考:Microsoft Edge|Microsoft Edge での追跡防止)
個人ユーザーの意識変化
- 広告ブロッカーの利用増加
広告ブロッカーの利用率は年々増加しており、2023年には全世界で42.7%のインターネットユーザーが利用していると推定されています。
(出典:BACKLINKO|広告ブロッカーの使用状況と人口統計) - 個人情報保護に関する意識調査
一般社団法人日本プライバシー認証機構が2023年に行った「消費者における個人情報に関する意識調査」では、7割以上の消費者が個人情報の取り扱いに不安を感じてると回答しています。
(出典:一般社団法人日本プライバシー認証機構|【2024年5月版】消費者における個人情報に関する意識調査)
これらの動きから、企業だけでなく個人においてもプライバシー保護への意識が近年高まっていると言えるでしょう。
2.個人情報保護に関する規制の強化
GDPR(一般データ保護規則)
EUで2018年に施行されたGDPRは、個人情報の収集や利用に関して厳しい制限を設けています。
サードパーティCookieによる追跡もGDPRの規制対象となる可能性があり、企業はGDPRに準拠するためにサードパーティCookieの使用を制限せざるを得なくなっています。
CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)
米国カリフォルニア州で2020年に施行されたCCPAも、GDPRと同様に個人情報保護を強化する法律です。
CCPAは、消費者に自分の個人情報へのアクセスや削除を求める権利を認め、企業に対して個人情報の収集や利用に関する透明性を義務付けています。
個人情報保護に対する意識や規制の強化は今後も加速すると予想され、サードパーティCookieの廃止は避けられない状況となっています。
サードパーティCookieの廃止でWebマーケティングはどう変わる?
サードパーティCookieの廃止は、Webマーケティングに以下のような影響を与えると予想されます。
- 広告ターゲティングの精度低下
ユーザーの行動履歴に基づいた詳細なターゲティングが難しくなり、広告効果が低下する可能性がある - コンバージョン測定の困難化
広告からのコンバージョンを正確に追跡することが難しくなり、広告効果測定が困難になる - リターゲティング広告の効果低下
過去の訪問履歴に基づいたリターゲティング広告が難しくなり、効果が低下する可能性がある - パーソナライズ体験の低下
ユーザーの興味関心や行動履歴に合わせたパーソナライズされたコンテンツやサービスを提供することが難しくなる
これらの影響により、Webマーケティング担当者は、従来のCookieに依存した戦略を見直し、新たな手法を模索する必要に迫られています。
では、サードパーティCookieが廃止された場合、企業はどのような対策を取るべきなのでしょうか?
サードパーティCookie廃止に備える!企業が取るべき対策
サードパーティCookieの廃止は、Webマーケティングに大きな変化をもたらしますが、決して悲観する必要はありません。
むしろ、この変化をチャンスと捉え、新たな戦略を構築することで、競合他社に対して優位に立てるマーケティング活動が可能になります。
以下に、企業が取るべき具体的な対策をご紹介します。
1.ファーストパーティデータの収集と活用
ファーストパーティデータとは、自社Webサイトやアプリ、CRMなどで収集した顧客データのことです。
サードパーティCookieに依存しないため、廃止後も引き続き活用できます。
Webサイトへのアクセス解析や顧客属性分析などを通じて、ファーストパーティデータを積極的に収集・活用しましょう。
ファーストパーティデータの取集方法について、以下に施策を紹介します。
ファーストパーティデータとゼロパーティデータの収集と活用
ファーストパーティデータ(自社で収集した顧客データ)とゼロパーティデータ(顧客が自発的に提供するデータ)は、サードパーティCookieに依存しないため、廃止後も引き続き活用できます。
これらのデータを積極的に収集・活用することで、パーソナライズされたマーケティング施策が可能になります。
データを収集するための具体的な施策
- 会員登録の促進
会員限定の特典(割引クーポン、ポイントプログラム、先行販売、バースデー特典など)や会員限定コンテンツ(ウェビナー、オンラインイベント、限定記事、動画コンテンツなど)を提供し、会員登録を促します。
会員登録フォームの入力項目を必要最小限に絞り込み、登録完了までのステップを簡素化することも重要です。 - アンケートの実施
定期的なアンケートやインセンティブ付きアンケートを実施し、顧客の声を収集します。アンケート結果を分析し、商品開発やサービス改善、マーケティング施策に活かしましょう。 - 会員登録フォームの充実
興味関心やライフスタイルに関する質問項目を追加し、ゼロパーティデータを収集します。 - アンケートのインセンティブ
アンケートに回答してくれた顧客に特典を提供することで、回答率を高めます。 - インタラクティブなコンテンツ
顧客が楽しみながら情報提供できるようなコンテンツ(クイズ、診断テスト、ゲームなど)を作成し、ゼロパーティデータを収集します。
2.コンテキストターゲティング
コンテキストターゲティングとは、Webサイトやアプリのコンテンツの内容に関連性の高い広告を表示する手法です。
ユーザーの行動履歴に依存しないため、サードパーティCookie廃止後も有効なターゲティング手法として注目されています。
具体的には、以下のような施策が有効です。
- キーワードターゲティング
コンテンツに含まれる特定のキーワードに基づいて広告を表示します。
例えば、「旅行」というキーワードを含む記事に、旅行会社の広告を表示するといったイメージです。 - トピックターゲティング
コンテンツのテーマやトピックに基づいて広告を表示します。
例えば、「健康」に関する記事に、健康食品やサプリメントの広告を表示するといった具合です。
キーワードターゲティングよりも広範囲なターゲティングが可能です。 - プレースメントターゲティング
特定のWebサイトやアプリ内の広告枠に広告を表示します。
広告を表示したいメディアを指定できるため、ターゲットとする層に効果的にアプローチできます。
例えば、特定のニュースサイトの特定のセクションに広告を表示するといったイメージです。
3.プライバシーサンドボックス
プライバシーサンドボックスとは、Googleが開発を進めている新たな技術です。
ユーザーのプライバシーを保護しつつ、広告ターゲティングや効果測定を可能にすることを目指しています。
プライバシーサンドボックスの詳細については、以下のサイトをご覧ください。
(参考:プライバシーサンドボックス: プライバシー保護を強化したウェブのための技術です)
プライバシーサンドボックスの動向を注視し、自社のマーケティング戦略にどのように活用できるかを検討することが重要です。
Cookieレス時代のWebマーケティング戦略
サードパーティCookieの廃止は、Webマーケティングの在り方を変える大きな転換点です。
しかし、この変化を乗り越え、成功を収めるための戦略は存在します。
以下に、Cookieレス時代におけるWebマーケティング戦略の詳細を解説します。
1. コンテンツマーケティングの強化
質の高いコンテンツでオーガニック検索からの流入を増やす
- ユーザーにとって価値のある情報を提供
読者の悩みを解決する記事、役立つ情報やノウハウを提供するコンテンツを作成しましょう。 - SEOに強く、検索されやすいコンテンツを作成
適切なキーワード選定、見出し構成、内部リンク最適化など、SEO対策を施し、検索エンジンからの流入を増やします。
関連記事:【2024年版】SEOとは|基本・やり方・具体施策を分かりやすく解説 - 多様なコンテンツ形式を活用
ブログ記事だけでなく、動画、インフォグラフィック、ホワイトペーパーなど、様々な形式のコンテンツでユーザーの興味を引く工夫をしましょう。
2. SEO対策
検索エンジン最適化で上位表示を目指す
- キーワード調査と選定
ターゲットとするキーワードを調査し、検索ボリュームや競合性を考慮して適切なキーワードを選定します。
関連記事:SEOのキーワード選定の極意|手順とツールを徹底解説 - コンテンツの最適化
タイトル、見出し、本文にキーワードを適切に盛り込み、検索エンジンにコンテンツの内容を正しく理解させます。 - 技術的なSEO対策
サイトの表示速度改善、モバイルフレンドリー対応、構造化データの活用など、技術的な側面からもSEO対策を行います。
関連記事:SEO内部対策とは|重要施策チェックリスト14選 - 被リンク獲得
信頼性の高い外部サイトからの被リンクを獲得することで、検索エンジンからの評価を高めます。
関連記事:SEOにおける被リンクの重要性とは?|SEO評価に効果的な対策・注意点・ツールを徹底解説
3. メールマーケティング
既存顧客との関係性を強化し、LTV(顧客生涯価値)を高める
- パーソナライズされたメール配信
顧客の属性や行動履歴に基づいて、それぞれに合った情報を提供します。 - ステップメール
顧客の状況に合わせて段階的に情報を提供し、購買意欲を高めます。 - ニュースレター
最新情報やお得な情報を定期的に配信し、顧客との接点を維持します。 - 休眠顧客の掘り起こし
長期間利用のない顧客に対して、特別なオファーやキャンペーンを案内し、再利用を促します。
4. SNSマーケティング
ソーシャルメディアを活用して、認知度向上やエンゲージメントを高める
- ターゲットに合ったプラットフォーム選定
自社のターゲット層が利用しているソーシャルメディアプラットフォームを選び、効果的な情報発信を行います。 - 魅力的なコンテンツ作成
画像、動画、テキストなど、様々な形式のコンテンツでユーザーの関心を引き、エンゲージメントを高めます。 - コミュニティ形成
ユーザー同士の交流を促し、ブランドに対する愛着を深めます。 - インフルエンサーマーケティング
インフルエンサーと協力し、より多くのユーザーに情報を届けます。
サードパーティCookie廃止に関するよくある質問
サードパーティCookie廃止に関するよくある質問を以下にまとめてみました。
Q1: サードパーティCookieが廃止されると、Web広告は完全にできなくなるのでしょうか?
A: いいえ、Web広告は引き続き可能です。
ただし、従来のサードパーティCookieに依存したターゲティングや効果測定は難しくなるため、新たな手法を模索する必要があります。
Q2: ファーストパーティデータとゼロパーティデータの違いは何ですか?
A: ファーストパーティデータは、企業が自社のWebサイトやアプリなどで収集した顧客データです。
一方、ゼロパーティデータは、顧客が自発的に提供するデータです。
アンケートや会員登録フォームなどで収集できます。
Q3: プライバシーサンドボックスとは何ですか?
A: プライバシーサンドボックスとは、Googleが開発を進めている新たな技術の総称です。
ユーザーのプライバシーを保護しつつ、広告ターゲティングや効果測定を可能にすることを目指しています。
Q4: サードパーティCookie廃止後も、リターゲティング広告は可能ですか?
A: はい、可能です。
ただし、従来のようなCookieベースのリターゲティングは難しくなるため、代替手段として、メールアドレスやIDソリューションなどを活用したリターゲティングが有効です。
まとめ:サードパーティCookie廃止はWebマーケティングの転換点
サードパーティCookieの廃止は、Webマーケティングにとって大きな転換点となります。
しかし、事前に対策を講じ、新たな戦略を構築することで、この変化を乗り越え、さらなる成長を遂げることが可能です。
今回ご紹介したファーストパーティデータやゼロパーティデータの活用、コンテキストターゲティング、プライバシーサンドボックスなどの新たな技術を積極的に取り入れ、Cookieレス時代のWebマーケティングを成功に導きましょう。
本記事で紹介した対策や戦略を参考に、ぜひ今から準備を進めてみてください。
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