地方で活躍するWebマーケターさんにお話を聞くこのシリーズ。
第10弾となる今回のゲストは、長野県長野市を拠点にWebマーケティング支援をされている、株式会社JBNの阿部さん、稲田さんです。阿部さん、稲田さんは、日々さまざまな企業の方と関わりながら、HubSpotによるWebサイト制作を核として、Web活用の支援をされています。
そこで今回は、お二人に地方企業がWeb活用を進めて行く上で大事なことについてお話を聞いてきました。Webマーケティングに関わる方はぜひお読みください。
株式会社JBN 稲田英資さん
長野県在住。株式会社JBN 制作ユニット マーケティングディレクター。東京の広告代理店で営業・企画、 地方の出版社で広告営業・編集を経て、 現在は長野県にあるWeb制作会社 株式会社JBNに所属。 主にBtoB企業のWebサイト戦略策定およびWebディレクション、コンテンツ制作、Web活用支援を担当。「伝わる」 をふやすを個人のミッションに、ユーザー・企業・ 社会の三方良しにWeb活用支援に従事している。
Webサイト:https://www.jbnet.jp/
X(旧Twitter):@inada_h
note:https://note.com/inada123
コロナ禍を経て最近変わってきたこと
編集部:今日はよろしくお願いします。改めてJBNさんについて簡単に教えていただけますか。
稲田:JBNは設立21年目となるWebサイトの制作会社です。ただ最近では、HubSpotを活用したWeb活用をテーマに、お客様にバリューをお届けしています。私たちが大事にしている理念は「成果に貢献する」こと。その理念を実現する方法として、Web制作、Web活用支援、HubSpotを掛け算したものがハマった感じです。
私たちのミッションは「伝わるをふやす」なのですが、Webの事業を始める前からコンテンツをとても大事にするDNAがありました。お客様が伝えたいことを伝わるように支援することが、私たちのバリューですし、その手段としてWeb制作やHubSpotがあるようなイメージですね。
編集部:地方だと、コロナ禍の前後でお客様の状況も変わってきている感覚があります。阿部さん、稲田さんはどのように見られていますか。
阿部:まずお客様の立場からは、やはりネガティブな印象を受けますね。従来、展示会をやっていたり、営業が飛んでいって顔合わせて営業していたりしていたのに、コロナ禍で急にできなくなったことがジワジワ効いています。
私の周りでは世の中で騒がれているほど長野県に影響は大きくなかったのですが、「なんとかしなきゃね」という話はよく出てきていました。とはいえ、すぐに「Webマーケティングをやろう」みたいにはならず、困っているけど何を目指してよいか見つけられず、悩んでいる印象がありましたね。
株式会社JBN 阿部寛樹さん
業界歴9年。戦略に基づいたサイト設計からコンテンツ制作、プロジェクト管理などWeb制作のディレクション全般を担当。制作ユニットリーダーとしてJBNの制作メンバーのマネジメントにも従事。Webサイト構築によるビジネス成果はもちろん、使い手が愛着を持てるサイト制作を目指す。
X(旧Twitter):@abePANDA0214
稲田:僕は、より明確に会社がふるいにかけられているなと感じます。半歩でも先に行こうとするのか、その場で立ち止まってしまうか、企業が分かれてしまう。僕たち支援会社としても、自分たちが持つバリューを誰に提供していくかを選ばなくてはいけません。やはり半歩でも先に進もうとしている方たちを支援したいんですよね。
阿部:正直ちょっと悩んでいます。いまでも地元企業をサポートして貢献したいと思っていますが、意気込んで提案するほどお客様とのギャップが生まれて結果的にミスマッチになってしまうケースもあって。最適解を見つけたいと思っています。
編集部:Webに対する向き合い方に温度差が出てきたんですね。何が違うのでしょうか。
阿部:やはり本気度、現状に対する危機感です。本気であれば、私たちも一緒に頑張って提案します。でも、どんな提案をしても「うーん」みたいな状況で、危機感もなく、本気度もないと、本当に何をやっても進まない。この部分は、僕たちがどれだけ頑張っても、どうにもならないです。逆に、向こうに意思さえあれば、正直何だってできる気がします。
稲田:僕自身ジレンマを感じているのは、先ほど阿部さんが言われた危機感は東京の会社さんのほうが持っているんです。本当は地元の方の助けになりたいと思ってやってきたけど、自分たちのバリューが発揮されるのは、東京の会社さんになっちゃうのが悩みですね。
Web活用がうまくいく企業とうまくいかない企業
編集部:いろいろな企業を見てきた中で、Web活用がうまくいく企業とそうでない企業は何が違うのでしょうか。
稲田:Web活用がうまくいかない会社は、目線がユーザーでなく、社内に向いていますね。Web活用の前提は、あくまでユーザーファーストです。コンテンツを評価したり、価値を決めたりするのは、ユーザーに決まっています。でも、ある会社はコンテンツを公開してユーザーに問う前から、「他社がやっている」「部長が気に入らない」とか、社内でコンテンツの良し悪しを評価してしまっている。それではなかなか前に進みません。野球をやりたいなら、三振してもいいから、まずは野球をやってみるべきです。
阿部:現場が頑張ってコンテンツを書いたり、新しいことをやってみたりしても、上層部に止められてしまって、この数ヶ月何も進んでないことがありました。僕たちも見ていて、担当者さんが可哀想だなと思いましたね。
稲田:僕たちがベストだと思うのは、コンテンツ作りを経営者と一緒にやることかなと。Webマーケティングの定石は、施策自体は間違っていなくても企業によって向き不向きがありますよね。〇〇という施策がA社には向いていても、B社は向いていないということが往々にしてある。だからどれが最適解であるかを見つけて行く必要があるのですが、その答えを左右するのは社風なんですよね。僕たちは最近、Webマーケティングがうまくいくかは社風次第かもしれないと話しています。
編集部:そこは完全に地方独特ですよね。東京だと役割が細分化されているから、やると決まったらやらないといけない。でも地方だと、正直経営者の考えとか、経営者が作ってきたその会社の環境とか理念とかに、従業員の感覚や性格が全部紐づけられていますらね。
Web活用に必要な3要素
編集部:阿部さんや稲田さんが、Web活用がうまくいくと感じる会社さんの特徴があれば教えてください。
阿部:結局、やる気ですね。Web活用を進める時は、会社の文化の再編集みたいになることが多いです。僕たちが提案して、一緒に握った目標に対して、一緒に乗っかって同じ船で漕ぎ出してくれる。現場レベルで合意したものを、意図とともにきちんと上司にも伝えてくれる。まさに一緒に戦ってくれるような方だと、僕らも応援したくなるし、一緒にやっていて楽しい。こういうケースは、絶対に何かしらの結果は出ると信じています。
稲田:僕はWeb活用に必要な3要素があると思います。プレーヤー、コンテンツ、予算です。お客様には、「最低でもこの3つのうち、1つでも用意してください」と伝えます。逆にどれもないなら、Web活用は無理だと話しますね。
たいてい地方だと、予算もない、コンテンツも今まで考えたことがない、と言われます。特に地方のWeb活用で大きな障害となるのは、プレイヤー問題です。なぜかみんなマネジメントをやろうとするんです。でもプレーをしてみなくては、マネジメントなんてできません。だから、必ずプレーヤーは1人決めて、1年間は絶対にやってくださいと言いますね。
1人本気のプレイヤーがいれば、成果は出せる
編集部:逆にプレイヤーが1人いれば、スタートはできるんですね。
稲田:1人でもプレイヤーになってくれれば、僕たちと一緒にチームになれます。チームになれたら試合ができるし、試合を通して一緒に知見を重ねられる。でもお客様がリングに上がらないのに、一緒に試合できるわけありません。Webマーケティングのノウハウはよく聞きますが、プレイヤーについてはあまり話されません。僕はそれが欺瞞だと思っていて、まずは社内にプレイヤーを置くことが何より大事なんです。
例えば、私がご一緒している技術系BtoBの企業様があるんです。そこの部長さんは本気になって、年50本くらい記事を書かれたのですよ。そしたら初年度で集客が3倍、売上が8倍になったんです。たった1人でも、プレイヤーがいれば推進力になるし、活動を重ねていけば結果を出せるようになるんです。
阿部:大変そうでしたが、途中からは楽しそうに取り組んでくださいました。やった分だけ成果が出ると実感できるとやっぱり楽しくなりますよね。時には先方から「こう言ったことを記事にしたらどうかな」なんて相談も来ます。
稲田:他にも、機器メーカー系のX社様では、Web活用を初める上で1個だけ約束をしました。それは、毎月必ずウェビナーを開催いただくことです。これは何があっても譲りませんと話しました。X社様としては初めての取り組みでしたが、約束を守ってくださって、もう3年以上続いています。今ではWeb活用の重要な大黒柱になっていますし、実際の営業活動にも貢献しています。
阿部:逆に僕らが見習うことばかりです。これだけ長期で毎月やり続ければ、きちんと結果が出るんだなと。自分たちもできていない部分があるなと、本当に勉強になるし、教えられていますね。
地方企業がWebで成果を出すために大事なこと
1.製品にバリューがあるか
編集部:稲田さんはご自身のnoteで、地方企業がWebで成果を出すために大事なことが4つあると書かれています。それぞれ具体的に教えていただけますか。
Web活用で成果を出すための4条件
- プロダクトに価値があるか
- コンテンツにしているか
- 発信しているか
- 本気で好きか
地方企業がWeb活用したいならまずはこの4つを黙ってやり込むことだと思っています。走り込みと一緒です。
稲田:僕は、BtoBにおいてWebでモノが売れるわけないと言い続けています。受注できるのは、優秀な営業がいて、お客様の課題をきちんと聞いて、最適な提案ができているからです。特にBtoBサイトで目的にすべきは受注ではなく「良質な商談」の獲得です。
その前提として重要なのが、製品にバリューがあることです。製品にバリューがあり、バリューを求めているユーザーがいることが前提です。Webも、コンテンツも、そのバリューを届けるための手段に過ぎません。逆を言えば、仮に製品バリューがなかったら、どれだけ良いサイトを作っても意味はないです。
阿部:どれだけ良い写真やコピーを掲載しようが、嘘になっちゃいますもんね。
稲田:バリューを決めるのは、僕らでも、クライアントでもなくて、ユーザーです。Webって基本的に製品自体にバリューがあることが前提なので、バリューを見出せないと本当にWebでは売れません。
阿部:一見バリューがなさそうで、コモディティ化した商品とか技術であっても、顧客に求められている以上「顧客に喜ばれている理由」があるはずなんです。それは、もしかしたら商品そのものではなく営業の気持ちいいコミュニケーションだったり、課題に寄り添う姿勢かもしれません。そうした自分たちのサービスに対する自信や愛情を一緒に掘り起こせればいいなと思います。
編集部:地方だと、よくWebが魔法みたいに思われている節がありますよね。どんな商品でも、サイトを作って広告かければ、飛ぶように売れるみたいな。でも、その商品に自分が信じられるだけの価値があるかを考えないといけないんですね。
2.コンテンツ化できているか
編集部:成果を出すために大事なことの2つ目はなんでしょうか。
稲田:コンテンツです。製品・サービスが持つバリューをすべて言語化して、どのバリューがお客様に響くかをコンテンツを使って検証していく作業ですね。このコンテンツでは、仮説が重要です。仮説自体は当たっても、外れてもいいのですが、仮説を持つことで差分がわかるんです。なお、この仮説検証するコンテンツは、いわゆる狙い撃ちして集客するコンテンツとは別ですね。
編集部:SEOの文脈だと、10本記事を書いて上位表示を狙おうとしますよね。そういった記事とは違うんですね。
稲田:もちろんSEOは超気にします。例えば、射出成形というすごいニッチな業界があります。そこで僕はクライアントから予算をいただき、頑張って記事を書いています。1年半経って、今は1位〜3位を取れてきました。
この記事の目的は、そのキーワードの周辺ワードを知るためです。「射出成形」で上記表示すれば、「射出成形×〇〇」とかのキーワードでも上位に上がってきます。すると、周辺キーワードの動向にも気づけるんです。
先日は「射出形成 ポリプロピレン」というワードの検索数が急増しました。ポリプロピレンは、成形業界でメジャーな樹脂の名前です。そこでクライアントに連絡して「ポリプロピレンについての記事を書いていいですか?」と確認して、すぐに記事にして「ポリプロピレン不足でお困りではありませんか?」とメールを配信しました。これもコンテンツがあったからこそ気づけた市場や業界の動きだと思います。B2Bこそ、周辺ワードをどれだけ拾えるかだと思っています。
編集部:SEO施策だと、記事からどうコンバージョンを取るかのイメージが強いですが、雨雲レーダーのように市場の動きをキャッチするために記事を使うこともあるんですね。
稲田:B2Bで顕著なのは、受注するまでがとても長いこと。ただそれだけだと半分しか説明できていません。B2Bでは、購買のタイミングがあります。本当に必要になった時しか、お客様は動きません。必要じゃない時にどれだけセールスしても売れるわけはありません。
編集部:お客様の動きを知るためにも、コンテンツが必要なのですね。
稲田:そうやってお客様のニーズが分かり、自分たちがソリューションを持っていれば、メールマガジンで「ポリプロピレン不足でお困りではないですか?」とメールを出せますよね。
僕にとってWebは、クリエイティブや作品を発表する場ではなくて、人が集まる場所なんですよ。クライアントとユーザーがいて、Webで出会ったり、行ったり来たりする。そのシーンで、人がどういった行動をしているのか、何がホットなのかを知ることに僕は興味があるんです。そこでコンテンツが大事なんですね。
3.きちんとデリバリーできているか
編集部:3つ目のポイントはなんでしょうか。
阿部:コンテンツのデリバリーですね。Webって基本はエンドユーザーさんが能動的に情報を取りに来るメディアですよね。だからどんなに発信をしていても届かないなら、発信できていないのではないかなと。エンドユーザーのことを考えてコンテンツをつくらないと、結局誰にも届かないことは多いです。
稲田:僕は「発信」という言葉があまり好きでないんです。どこか嘘くさいというか。メールマーケティングは、デリバリーする点ではよいですよね。ただデリバリーできても、商品を買ってくれるわけではありません。
大事なのは、デリバリーすることできちんと想起されるようになることです。Webでダイレクト流入してくる人の多くは、同僚から情報共有があって来ることが多いんです。いわゆるダークソーシャルで想起されて入って来たユーザーは、CV率も非常に高い。コンテンツやメールを通した継続的なコミュニケーションがユーザー側の想起を醸成していくとぼくは思っています。このために継続してデリバリーすることが大事なんです。
編集部:なるほど、するとメルマガ1通を出すにしても、ただ数を送るのではなく、「この会社っていつも良い情報をくれるよね」と思ってもらえる内容を作っていくべきなんでしょうか。
稲田:これがまた一概に言えないので面白いんですよね。たくさんのメールが毎日届く中で、基本的にユーザーは気になったタイトルのメールだけを開封する。「この会社は有益なメルマガを送ってくる」と思ってくれる人もいるだろうけれど、そうじゃない人だってもちろんいる。WACUL社のレポートにもそんなことが書いてありましたね。大切なのは、メールの向こうに多様な人々がいるといつも想像することだと思います。
編集部:エンドユーザーさんは多様で、いろいろなニーズがあるから、いろいろな切り口でメッセージを届けないといけない。さらに、ただ届けるだけでなく、コンテンツ自体もエンドユーザーに寄り添って役立つ内容でないといけない。こういったことですかね。
稲田:はい。あくまでデリバリーは手段です。特にBtoBサイトの目的は、ソリューションを知ったユーザーが「ここなら解決してくれそう」と相談してくれること。そのソリューションを伝えるのが、コンテンツなんです。結局のところ、ユーザーをきちんと見て、その人たちに役に立つコンテンツを作るしかないですね。
4.本気で好きか
編集部:最後の項目にある「本気で好きか」は、どういうことでしょうか。
稲田:以前に、X(旧Twitter)で同じことを書いたら、ある方から「ここで言う好きは、プロダクトのことか、Web活用のことか、どちらですか?」と質問されたんですよ。その答えとしては、プロダクトもWeb活用も両方だと思います。
プロダクトが好きでないと、そもそもスタートラインには立てません。しかし、Web活用が好きではないと、進まないのです。一方で、Web活用はやっていく中で好きになることも往々としてあります。僕が好きな漫画に、こんなフレーズがあります。「好きだからやるんじゃない。やるから好きになるんだ」と。地方にプレイヤーがいないなんて話もありましたが、Web活用に取り組む人が増えれば、その中で好きになっていく人はいると思うんです。施策の成果とかも大事ですが、まずはプレイヤーとしてWeb活用を好きになってもらうほうがずっと重要なんです。
編集部:マーケティングで成果を出すって、正直出口がないトンネルの中をひたすら走るような気持ちになることがあります。最後は、自分がやっている仕事を信じられるのか、好きになれるのかが重要だなと思いました。そういった気持ちがなく、言われたからやるとかだと、続かないような気がしています。
稲田:言われたからやる人は、プレーヤーではなく、オペレーターです。プレイヤーは、自らフィールドに立って、自分に必要なことを能動的にやる人だと思っているので。そうでなくては、うまくいくわけがありません。だから、僕は人材を1から育てることは重要だなと思っています。
事業会社と支援会社はどう関わるべきか
編集部:稲田さんは、事業会社と私たち支援会社の関わりについて、コラボレイティブという言葉を使われていますよね。うまく連携するためには、どうすべきだとお考えですか。
稲田:この先の経営課題として人不足になることは、避けて通れません。その前提の中で、事業会社での内製化の動きは絶対に必要になってきます。
とはいえ現実的には、内製化できる会社と、できない会社に二分されます。そして内製できない多くの中小企業は、ただでさえ不足する社内リソースの中で、社内にないスキルやリソースをどのように獲得していくかが問題になります。その答えは、社外のリソースと友好的なコラボレイティブな関係をつくって、物事を進めていくしかありません。
編集部:確かに人が少なくなるからこそ、社外のリソースとうまく折り合いをつけるしかないですし、そのスキルは必要になりそうですね。お金を出す人、受けてやる人という関係ではなく、事業課題の解決に向けて一緒に「こういうことができそうですね」とやっていくような感じでしょうか。
稲田:そうだと思います。AXISさんが僕のクライアントであるとすれば、僕のアウトプットを120%に引き出す能力が、これから求められるスキルなんじゃないかと。
編集部:ある意味プロジェクトマネジメントみたいな要素ですね。ただ中小企業だと、そういった役割は誰が担うべきなんでしょうか。そこも社外のリソースを頼るべきなのでしょうか。
稲田:僕はそういったスキルをコミュニケーション能力だと思っているのですが、自分たちが専門でない領域の専門家とどうやってコミュニケーションを取って、リターンをより大きくできるかを仕事で考えられないと、今後の中小企業は業務が成り立たなくなると危惧しています。今でも税理士さんなどの士業はうまく行っていると思うのですが、そういったスキルが一般的になるとよいなと思っています。
編集部:確かに僕が社労士さんに質問するよりも、詳しい社内メンバーが質問するほうが、より情報を引き出してくるんですよね。会社としては同じフィーを払って、同じような質問をしているのですが、質問する人によって社労士さんのアウトプットは大きく変わるなと。そういった情報をうまく引き出せることがスキルなんでしょうね。
稲田:本当にそうですね。結局はどんな「問い」をするかだと思っています。Web制作の現場で僕たちがよく陥るのは、「ここの線を赤くしてほしい」とオーダーだけされるケース。これだと意図がわからないですよね。顧客と制作会社が協働関係になれていないよくある例だと思います。
これからの発注者に求められるのは「良質な問い」のスキルだと思います。「ここを赤くして」ではなく、「〇〇のために〇〇を実現したいのだけど、どんな選択肢があるでしょうか?」というような。
Web業界は、基本的には受発注の関係です。ただ私たち支援会社は、「協働して良いものを作ろう」というコラボレイティブなマインドや意識を持った会社と組んだほうが本領を発揮して、バリューが出せる。お互いにとってWin-Winな関係がつくれるようになると思っています。
おわりに
今回は、JBNの阿部さん、稲田さんに、地方企業がWeb活用を進めていく上で重要なことについてお話を伺いました。
印象に残ったのは、どれだけ本気になれるかが重要であること。本気になれば、必ず行動量も増えていき、応援してくれる人も現れるはず。それゆえ成功確率も上がっていきます。
いち早く未来を見据えて、一歩を踏み出し始めることが今、求められているのかもしれません。
聞き手・文・撮影:Marketing Quest編集部