Googleアナリティクスはデータ分析の重要なツールであり、多くの企業で活用されています。
Webサイトの数値変化を把握するためには、過去のデータとの比較が有効です。この比較により、先月や昨年の成果と今年の結果を相対的に評価できます。
たとえば、今年に入ってから売上が減少した場合、何かと比較することで原因が見つかるかもしれません。この際、自社の過去データが比較対象として有用です。
しかし、2020年以降コロナの影響を受けて、単純な過去データの比較だけでは判断が難しい状況が生まれています。過去のデータを比較をしても、ノイズ(不要な情報)が入ってしまい、実施した施策の効果が明確には判断できないこともあります。
そこで今回の記事では、大きなイベントや社会的な変化による突発的なデータ変動があった場合の分析方法を紹介します。
どのようにデータに向き合い、ノイズを除去してデータ分析を進めるべきか、5つのステップで解説していきます。
ノイズを除去してデータ分析する5つのステップ
ステップ1. イベントカレンダーを確認
まず最初のステップとして、イベントカレンダーを確認しましょう。
突発的なトラフィック(Webサイトへのアクセス)増加が見られる場合、事業に関連するイベントがあった可能性が考えられます。ノイズの要因となり得るイベントがなかったかを確認しましょう。
たとえば、TVや雑誌などのメディアで取り上げられたり、SNSでコンテンツがバズったりすると、一時的にWebサイトのトラフィックが急増することがあります。
また、オフラインで近隣でちょっとしたイベントがあれば、サイトへの訪問者数に影響を与えることがあります。
スイーツを扱うECサイトの場合は、バレンタインなどのイベントでデータは大きく変動することがあります。
そして、写真館では入園や入学の時期に影響を受けることがあり、多くの業種で季節的なイベントの影響を考慮する必要があります。
このように自社サイトに影響を与える可能性のあるイベントをチェックし、データ分析時のノイズとして考慮しましょう。
また、事前にイベントを把握しておくことで、サイト上での訴求、広告の運用方針、メルマガの配信タイミングなどを計画的かつ効果的に活用することができます。
ステップ2. Googleトレンドで人気度の動向をチェック
2つ目のステップでは、Googleトレンドを利用して、自社に関連する検索キーワードの動向を調べてみましょう。
この方法により、季節変動を把握することができます。
また、大きな社会的変化が起きた際には、その影響がウェブ空間にどのように波及しているのかを確認することができます。
こちらは、2015年10月から2020年4月の間における「お取り寄せ スイーツ」の検索キーワードのトレンドデータです。
このデータを見ると、5月3日~9日の間に、過去には見られなかったピークが現れています。
2020年3、4月は、コロナの影響で自粛を要請されていました。
どこにも行けない状況下、多くの方が美味しいスイーツを取り寄せて、自宅で楽しもうとしたことが想像できます。
このように、イベントカレンダーとGoogleトレンドを使って、自社サイトへの影響を確認してみましょう。
そして特定な年だけの急変であれば、それをノイズとして捉えて昨対比較を行うことで、正しい判断ができます。
ステップ3.参照元/メディア別にセグメントを分けて分析する
3つのステップでは、参照元/メディアを分けて、セグメント別にデータを見ていきましょう。
大きなデータ群を全体で見流だけでは、特定の傾向が見えにくいこともあります。
しかし、データを小さなセグメントに分割することで、特徴的な傾向を発見できることがあります。
また、細分化したセグメント同士を比較することで、どのデータ群に何が起きているのかを把握しやすくなります。
たとえば、コロナなどの社会的な要因によって広告運用の成果が低下したとします。
前年との運用結果を比較すると、今年の運用評価は低くなるでしょう。
しかし、このような状況下で広告運用の効果を正確に判断するためには、前年のデータと比較するのではなく、現時点で他の参照元と比較することが重要です。
具体的には、「自然検索からの流入数」や「コンバージョン率(CVR)の変動率」などを比較することで、どこに問題があるのかが明確になります。
広告においても、Google広告のリスティングとディスプレイでは異なる傾向が見られるでしょう。
また、ディスプレイ広告の中でも、ネイティブアプリ※に広告配信したときとYouTubeに配信したときでは、異なる挙動が確認できます。
※ネイティブアプリ
特定のデバイスやOSに最適化されて開発されたアプリケーション
例:Instagram、Google Mapなど。
データのノイズを減らすためにも、データを細かい粒度で分析し、対比するテクニックを覚えておくことが重要です。
コロナのような大きな社会的な変動があった場合でも、各粒度のデータを比較することで、全体傾向の中の一部としてデータを見ることができます。
これにより、ノイズを減らしてデータの評価を行うことができます。
ステップ4. 競合との比較 (広告出稿状況)
4つ目のステップは競合との比較です。
大きな数字の変動が見られた際には、それが自社だけの変動なのか、それとも同業種の競合も同様の変動を経験しているのか確認することで、データのノイズを減らすことができます。
たとえば、特定の検索キーワードに対するクリック単価が突如として低下したが、設定に変更はなかったとします。
このような場合、問題が自社だけに存在するのか、それとも競合企業も同様の状況に直面しているのかを、競合分析を通じて確認しましょう。
この時には、Ahrefs(エイチレフス)などの競合調査ツールを利用することで、特定の検索キーワードの検索数やクリック単価といった出稿状況を把握することができます。
このような競合調査ツールを使い、競合企業の動きをとらえましょう。
ステップ5. 昨年、一昨年の傾向を見る
これまでに述べたステップを通じて、データのノイズを可能な限り削減し、今回のデータを過去のデータと比較します。この比較によって、現在の状況が一時的なものなのか、それとも長期的な傾向なのかを理解することができます。
例えば、今年の売上が大きく減少したと仮定しましょう。
もし全ての流入チャネルで売上が均等に減少している場合、広告やコンテンツマーケティングのような特定の集客方法が問題である可能性は低いでしょう。
これは、全体的な市場環境や消費者の行動が変わっている可能性が考えられます。
サイトの反応率(訪問者がサイトでどれだけ活動しているかを示す指標)も同様に、全てのチャネルで同じように減少している場合、サイトが突如として時代遅れになったわけではないではなく、外部要因が影響を与えている可能性を示しています。
もしかすると、競合企業による新しい広告キャンペーンや価格競争により、顧客が移動しているだけかもしれません。
競合企業の広告出稿状況やサイト上での訴求(期間限定のキャンペーンやセールの増加など)を調査することで、競合企業が受けている影響も推測できます。
もし競合企業も同様に売上が減少している場合、社会的背景や経済環境が影響を与えている可能性が高いでしょう。
このような情報は、市場全体の動向を理解し、今後の戦略を計画する上で非常に役立ちます。
まとめ
デジタルマーケティングの領域では、外部要因の影響によりデータが乱高下することがあります。これにより、自社のマーケティング施策の効果を正確に評価することが難しくなる場合があります。
このような状況に対処するためには、ぜひ以下のステップを実践してみてください。
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イベントカレンダーや最新のニュースを確認
外部イベントや社会的動向が自社のデータにどのような影響を与えているのかを理解するために、イベントカレンダーや世間のニュースをチェックします。 -
Googleトレンドで季節変動を確認
季節変動やトレンドが自社のデータに影響を与えている可能性があるため、Googleトレンドを使用して関連するキーワードの人気度を確認します。 -
データを細分化して分析
イレギュラーな動きが見られる場合、データを細分化して各セグメントを分析し、異常な動きの原因を特定します。 -
競合の動きを観察
競合企業の動きを観察し、市場全体の動向を理解することで、データのノイズを除去し、より正確な分析を行います。 -
昨年のデータと比較
最後に、昨年のデータと現在のデータを比較し、実施中のマーケティング施策の効果を評価します。
これらのステップを踏むことで、外部要因の影響を適切に評価し、デジタルマーケティング施策の効果を正確に判断することができるでしょう。